食物アレルギーの子どものための 食事の基礎知識
2.原因食物別 除去のポイント 牛乳
除去方法(食材として用いないで調理する方法)と栄養面の補い方
カルシウム不足に注意が必要です。
- タンパク質は、他の食品で補うことができますが、カルシウム源の代替が必要です。とくに乳児では、アレルギー用ミルクの摂取が必要です。
普通牛乳90mL(ミリリットル、以下「mL」)中のカルシウム(100mg(ミリグラム))代替の目安
普通牛乳90mL中のカルシウム(100mg)代替の目安
食品 |
目安となる量 |
備考 |
牛乳アレルゲン除去調製乳 |
180mL(ミリリットル、以下「mL」と表記) |
|
調製豆乳 |
300mL |
|
木綿豆腐* |
107g(グラム、以下「g」) |
約1/4丁 |
絹ごし豆腐* |
133g(グラム、以下「g」) |
約1/3丁 |
凍り豆腐(乾) |
16g(グラム、以下「g」) |
1枚 |
ししゃも(生干し) |
30g |
1.5尾 |
桜エビ(素干し) |
5g |
|
しらす干し(半乾燥品) |
20g |
|
ほしひじき(乾) |
10g |
3食分 |
切り干し大根(乾) |
20g |
2食分 |
小松菜(生) |
60g |
|
- *製法によりカルシウム量は大きく変わるので注意。大きさも様々である。
日本食品標準成分表2020年版(八訂)をもとに作成
アレルギー用ミルク(特別用途食品・ミルクアレルゲン除去食品)
アレルギー用ミルクは、分子量を小さくすることにより生体内でアレルゲン性を示さないようにしたもので、加水分解乳とアミノ酸乳があります(下表)。
それぞれのミルクの抗原性や味には差があるので、どのミルクを使用するのかは医師とよく相談してください。
アレルギー用ミルク(特別用途食品・ミルクアレルゲン除去食品)
成分・風味 |
加水分解乳 |
アミノ酸乳 |
ニューMA-1 (森永乳業) |
ミルフィーHP (明治) |
エレメンタルフォーミュラ (明治) |
窒素源 |
カゼイン分解物 |
◯(含まれる) |
(記載なし) |
精製結晶L-アミノ酸 |
乳清分解物 |
(記載なし) |
◯(含まれる) |
分子量 |
平均分子量 |
約300 |
800~1,000 |
75~204 |
最大分子量 |
1,000 |
3,500 |
標準調乳濃度 |
15% |
14.5% |
17% |
風味 |
独特の風味 |
良好 |
独特の風味 |
- *いずれの調整乳にも乳糖は含まず、ビタミンK、ビオチン、カルニチンが配合されています。
- *2021年6月8日に大豆乳である「ボンラクト」がアレルゲン除去食品として認可されました。
調理によって受ける変化
牛乳は加熱してもほとんどアレルゲン性が低下しません。
- 牛乳タンパク質の80%を占めるカゼインが主要アレルゲンであり、加熱にも安定であるためです。
- マフィンやパンに含まれる牛乳なら無症状で食べられることがあります。これは小麦と混ぜて高温で加熱すると牛乳のアレルゲン性が低下するためです。これらの食品を食べられても、その中に含まれる同量の牛乳をそのまま飲むと症状を起こすことがあるのはこのせいです。また、牛乳アレルギーの重症者は、マフィンやパンの牛乳でも症状が出ることがあるので注意してください。
加工食品を用いるときの注意
牛乳アレルゲンに関する、加工食品のアレルギー表示の見落としによる誤食が多いので、正しく理解しておきましょう。
- 「乳」のアレルギー表示は「○○(乳成分を含む)」と表示されることがあり、添加物の場合には「○○(乳由来)」と表記されます。
- ホエイパウダー、カゼインナトリウムなど「乳」という文字が含まれないものでも、牛乳が含まれているものがあります。その場合(乳成分を含む)(乳由来)の表示を確認しましょう。
食品表示を読むときの注意(わかりにくい表示)
乳糖:
乳糖は本来糖質ですが、乳タンパク質の混入が避けられないため、乳の拡大表記とされています(参照 【解説】加工食品のアレルギー表示の読み方 Point2)。乳糖に含まれるタンパク質は微量なので、牛乳アレルギーがあっても、多くの場合、食べることができます。医師に相談しましょう。
乳という文字が入っているが乳製品ではないもの
- 乳化剤:
- 卵黄、大豆、牛脂などからつくられます。
- 乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム:
- 化学物質です。
- 乳酸菌:
- 菌の名前です。漬けものなどにも含まれます。ただし、乳酸菌飲料は乳製品です。
牛乳とは関係ないもの
牛以外の動物の乳
- 牛以外の動物の乳(山羊乳、めん羊乳)は表示の対象外ですが、牛乳アレルギーの人の多くは、山羊乳でも症状が起こります。
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