WEB版すこやかライフ ぜん息&COPD(慢性閉塞性肺疾患)のための生活情報誌

すこやかライフNo.53 2019年3月発行

小児ぜん息 その他のアレルギー現場レポート:みんなが楽しめる給食のために 学校での食物アレルギー教育

事例② ひたちなか市立市毛小学校〔茨城県〕

学校全体で食物アレルギーのある児童を守る

食物アレルギーは花粉症と同じで特別なことではない

写真1校内研修のロールプレイで、エピペン®使用時の役割分担をシミュレートする、市毛小学校の教職員の皆さん

市毛(いちげ)小学校では、文部科学省から『学校給食における食物アレルギー対応指針』が示される前から全国に先がけて、全職員一丸となって誤食事故防止や緊急時対応などの体制を整えてきました。その一環として児童への食物アレルギー教育にも力を入れ、食物アレルギーを理解した児童たちは、事故防止の大きな力になっています。

この取り組みのきっかけとなったのは、卵、牛乳だけでなく、多くの食物にアレルギーがあったBさんの存在でした。当時、まだ低学年だったBさんは、原因食物に触れただけで症状が出るほどでしたが、クラスメートはまだ幼く、知識もなかったため、いつ事故が起こるかわからない状況でした。

「給食時間は本当に心配で、担任の先生も深刻に悩んでおり、子どもたちへの指導が急がれました」

こう語るのは、養護教諭の先生とともに、体制づくりの中心となった栄養教諭の樋口教子先生(現在は、水戸市立三の丸小学校勤務)です。

樋口先生はまず、Bさんのクラスで、給食前の時間に食物アレルギーについての説明をしました。このとき、低学年の児童でもわかりやすいように、クラスで罹患している児童が多い花粉症にたとえて、決して特別なことではない点を強調したそうです。

「花粉症の子は、花粉が体の中に入ることで、鼻水が出たり目がかゆくなったりするよね。食物アレルギーの子も、ある決まった食べ物を食べたときに、具合が悪くなっちゃうんだ。原因が花粉か食べ物かの違いだけで、同じ仲間なんだよ」

そのうえで、食物アレルギーの子がみんなと違う給食を食べるのは、花粉症の子がマスクで花粉を防ぐのと同じであることを説明しました。他にも、給食のときは牛乳などがBさんにかからないよう、ふざけず行儀よく食べるよう繰り返し指導したり、食物アレルギーのある児童の体調が悪そうなときは、周囲の大人に声をかけるようにお願いしたりしました。

「子どもにもわかるように説明したことで、『学校全体で食物アレルギーのある子をみんなで守っていこう』という意識が強くなっていきました」と、樋口先生は語ります。

食物アレルギーのある児童への配慮が当たり前に

Bさんの学年では、進級のクラス替えのたびに、樋口先生がBさんのクラスで説明する機会も設けました。その結果、高学年になると、ほとんどの児童が食物アレルギーに詳しくなり、Bさんと接した経験ももつようになりました。

そうなると児童たちは、「いただきます」の前に率先して献立表を見て、Bさんが食べても大丈夫かのチェックをしたり、家庭科の調理実習でBさんと同じ班になったら、原因食物が含まれていないか、みんなでチェックしたりと、担任が「私よりしっかりしている」と驚くほど的確な配慮を、自然にできるようになったそうです。

樋口先生は、「子どもたちって、すごいんですよ。小さいころから繰り返し指導していけば、食物アレルギーの子を特別視せず、自然に接するようになります。またそれは、他の病気や発達障害などでも同じなんです」と話します。

事例② ひたちなか市立市毛小学校〔茨城県〕
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