WEB版すこやかライフ ぜん息&COPD(慢性閉塞性肺疾患)のための生活情報誌

すこやかライフNo.53 2019年3月発行

小児ぜん息 その他のアレルギー現場レポート:みんなが楽しめる給食のために 学校での食物アレルギー教育

事例③ 尾張旭市教育委員会 〔愛知県〕

おいしく楽しい「皆が食べられる学校給食の日」

同じおかずを食べることが「喜び」「気づき」をもたらす

尾張旭市教育委員会では、「皆が食べられる学校給食の日」を実施しています。おかず(主菜・副菜)と汁物に特定原材料7品目を使わず、食物アレルギーの児童生徒も皆と同じ食事をとるというこの取り組みは2013年度に始まり、現在は月2回実施されています。

栄養教諭の浅野絵梨先生は、その教育的効果について、こう話します。「ある小学校のクラスでは、普段から、担任と食物アレルギーの児童本人だけでなく、クラス全員で献立を確認しています。この日が来て献立が読み上げられると、クラス全体から自然と拍手がわき起こります。みんなで同じ食事を食べられることへの喜びは、大きいのではないでしょうか」

写真1
毎月の献立表は、「皆が食べられる学校給食の日」がひと目でわかるようになっている

一方、同じく栄養教諭の曽根規容子先生は「食物アレルギーを普段、あまり意識していないクラスでも、この日は、『食物アレルギーのあるクラスメートがいる』ということを改めて確認する機会になっているのではないかと思います。また食物アレルギーの児童生徒にとっては、皆と同じ物を食べる喜びを通して『食べられる物を増やしたい』という気持ちが芽生え、治療を進めるモチベーションにもなっているようです」といいます。

両先生とも、皆が楽しく食べられるよう、7品目を使わないだけではなく、味にも見た目にもこだわった献立づくりを心がけているそうです。7品目すべてを使わない副食をつくるには、エネルギーやタンパク質をいかに確保するかなど困難も伴います。しかし、同市の給食は、普段から7品目をなるべく使わない配慮をしており、こうした下地があってこそ、月2回の実施が実現できたといえます。

ただし、このような配慮には、注意すべき点もあると、学校給食センター所長の鬼頭純子さんは語ります。「給食では、保護者・学校・給食センターが連携して原因食物を除去していますが、社会に出たら、食べられるかどうかを自分で判断しなければなりません。食物アレルギーの児童生徒には、皆で食べる『楽しさ』を知ってもらうとともに、自分で判断する力も身につけていってほしいです」

就学前からの教育で食物アレルギーへの理解を深める

同市では、公立の保育所・小学校に通う園児・児童たちを対象とした食物アレルギー教育も行っています。

教材は、静止画にナレーションを加えた「電子紙芝居」です。卵アレルギーの主人公・ミミちゃんに、さまざまなアレルギー症状が現れる絵を示し、食物アレルギーの子が普通の給食を食べられないのは、「好き嫌い」ではなく、「危険だから」ということを教えています。

写真2
園児たちが電子紙芝居で食物アレルギーの仕組みを学ぶ様子

曽根先生は、「就学前の保育園児のときから、食物アレルギーについて教えることで、成長するにつれ、食物アレルギーへの理解がより進むと思います」と話します。

事例③ 尾張旭市教育委員会 〔愛知県〕
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