
すこやかライフNo.48 2016年9月発行
特集:上手なサポートで薬嫌いを克服しよう
ぜん息の薬のように定期的な服用、吸入が必要な場合、保護者はつい子どもに任せっきりにしてしまったり、飲まないことを叱ったりしてしまいがちになります。しかし、子どもは「飲みなさい、吸入しなさい」と放っておかれるだけでは、なかなか続けることができません。
実は、保護者が自分に注意を向けてくれないことが、薬嫌いの原因になっていることがよくあります。まずは保護者自身が、ぜん息の治療は「自分でできるんだ!」という子どもの自己効力感を育むよい機会だととらえましょう。そして、薬を飲んだり、吸入したことを見守り、ほめることが、子どもの意欲向上につながることを覚えておきましょう。家族みんなでサポートすること、サポートされていることを子どもに理解させることも大切です。
また、家庭環境や兄弟との関係、通っている園・学校の環境などにも、子どもが薬嫌いになる原因が隠れていることがあります。事例を参考に、子どもの薬嫌いの原因がどこにあるのか探ってみましょう。
子どもが病気のとき、親が「自分ががんばらないと」と思ってしまうのは当然のことですが、いつもいつも薬のことしか言わない、飲まないと病気が治らないと言われ続けると、子どもは薬自体が嫌いになってしまいます。
嫌がるときには、過度に干渉しないのもひとつの手です。「わかった。じゃあ飲まなくていいよ」といったん引いてみると、子どもは「あれ? いつもと違う」と思い、自分から「飲む」と 言い出すこともあります。子どもとのやりとりを楽しむくらいの余裕を持つことも大切です。
薬を飲まないで怒られることが、子どもにとっては「親にかまってもらえる」という認識になっていることがあります。
これを「飲めばほめてもらえる、かまってもらえる」という認識に変えましょう。「今日もがんばったね、えらいね」と毎回一言かけるだけでも、子どもの意欲は変わります。
また、兄弟で治療しているときには、上の子どもにも注意を払いましょう。たとえば吸入が終わったら、少しでも1対1で遊んであげると、「ちゃんとやれば、遊んでもらえる」という認識 にすることができます。
「薬を飲んだらカレンダーやお薬手帳にシールを貼ろうね」と約束し、それを確認することも有効です。シールを貼ることが楽しみや達成感になり、薬を続ける動機につながります。
すずらん調剤薬局で使用しているシール。
自分で動物を元気にすることができる。
幼稚園や保育所、学校では薬を飲むけれども、家ではまったく飲まないという場合、〈事例2〉と同じような理由が隠れていることがあります。
幼稚園や学校で薬を飲むと、先生や友達がほめてくれる、ヒーローになれることが子どもを満足させ、薬を飲む動機につながるのです。
ほめる一言や、飲んだら一緒に遊ぶなど、家でも薬を飲むといいことがある、という意識を持たせることが大切です。
最近は、祖父母との同居も少なくなり、誰かが薬を飲む光景を子どもが見る機会が少なくなってきました。そのため、子どもが「どうして私だけ、薬を飲まなくちゃいけないの?」「どうして私だけ、面倒な吸入をしなくちゃいけないの?」と思ってしまうこともあります。
こうすることで「同じことを一緒にやる」という気持ちにすることができます。
(注)正しい吸入方法を練習するための薬剤が入っていない練習器。