WEB版すこやかライフ ぜん息&COPD(慢性閉塞性肺疾患)のための生活情報誌

すこやかライフNo.53 2019年3月発行

小児ぜん息 成人ぜん息 特集:進歩するぜん息治療―患者さんがぜん息治療の主役に―

さまざまな治療薬の登場

かつて、ぜん息は原因がわかっておらず、発作で呼吸ができなくなり、死に至ることもある恐ろしい病気でした。当時は、発作が出たときだけ「発作止めの薬(β2[ベータツー]刺激薬)」を使う治療が中心でしたが、発作止めだけに頼る治療は、ぜん息が悪化しやすく、入院や死亡する患者さんがたくさんいました。

しかし、1990年代以降、ぜん息は“気道の炎症”が原因で起こる病気であるということがわかってきます。ぜん息の治療指針を示したガイドラインが作成され、気道の炎症を抑える「吸入ステロイド薬」が普及し始めました。

これにより、ぜん息治療は、発作が出たときに薬を使う治療から、吸入ステロイド薬を日常的に吸入することで気道の炎症を抑え、発作が起こらないように予防する治療へと変化し、患者さん自身が症状をコントロールできるようになりました。

ぜん息治療の変遷

2000年には、気道の炎症や収縮を抑える働きのある飲み薬、「ロイコトリエン受容体拮抗薬」が登場し、吸入ステロイド薬をうまく吸入できない小さな子どもや高齢者でも、ぜん息をコントロールしやすくなりました。

さらに2007年には、「吸入ステロイド薬」と「長時間作用性β2刺激薬」をひとつにした配合剤が登場しました。それまで、この2種類の薬を処方されていた患者さんは、2種類の異なる吸入器を使用しなければならず、操作が煩雑で吸入が面倒になってしまうことが多々ありました。しかし配合剤の登場により、ひとつの吸入器で一度に両方の薬を吸入できるようになり、手間が減り、定期的な吸入が楽にできるようになりました。

このような、ぜん息治療薬の進歩の結果、ぜん息での入院、死亡は大幅に減少しました。しかし、小児・成人に比べ、高齢者のぜん息死が依然として多いことが、問題になっています。

ぜん息死亡者数の推移 (厚生労働省人口動態統計)

健康な人と変わらない生活を送ることができていますか?

どんなに薬が進歩しても、その効果を十分に発揮させるには、患者さん自身が主体的に治療を続けていくこと(自己管理)が大切です。

小児、成人ともにぜん息のガイドライン注1で示されている治療目標は“健康な人と変わらない生活を送ること”です。

薬を続けているにもかかわらず、せきが出たりゼーゼーしたりすることはありませんか? 「症状が出るのはぜん息だから普通のこと」と思っていませんか?これでは“健康な人と変わらない生活”とはいえません。

“健康な人と変わらない生活を送る”という治療目標を達成するために、次のページから紹介する自己管理のチェックポイントで、治療への取り組み方を確認し、見直してみましょう。

(注1)ぜん息のガイドライン
日本アレルギー学会(2018)『喘息予防・管理ガイドライン2018』協和企画.
日本小児アレルギー学会(2017)『小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2017』協和企画.

新たな重症ぜん息治療法の登場

一方で、最大限の治療をしてもぜん息をコントロールできない重症の患者さんもいます。近年は、こうした重症ぜん息に対する治療法として、ぜん息症状の原因となるアレルギー反応の進行を抑える「生物学的製剤」(抗IgE抗体[こうアイジーイーこうたい]、抗IL-5抗体[こうアイエルファイブこうたい]、抗IL-5受容体α抗体[こうアイエルファイブじゅようたいアルファこうたい])や、「気管支熱形成術(気管支サーモプラスティ)」という手術によるぜん息の治療が登場しています。

重症ぜん息の最新治療については、「重症ぜん息の新しい治療」で紹介しています。

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