WEB版すこやかライフ ぜん息&COPD(慢性閉塞性肺疾患)のための生活情報誌

すこやかライフNo.53 2019年3月発行

小児ぜん息 成人ぜん息特集:進歩するぜん息治療―患者さんがぜん息治療の主役に―

重症ぜん息の新しい治療

近年、高用量の吸入ステロイド薬や複数の薬を併用しても症状が安定しない重症ぜん息患者さんを対象にした、さまざまな治療法が開発されています。これらの治療によって、重症であっても症状をコントロールできる患者さんが多くなりました。今回は、保険適用となっている気管支熱形成術と、生物学的製剤についてご紹介します。

ただし、これらの治療には、次のような注意点もあります。

まず、新しい治療法であるため、効果の持続期間や安全性などについて、まだ不明な点があります。これらの治療を希望する場合には、必ず主治医に相談してください。

また、医療費が高額になります。ただし、お住まいの自治体による補助や医療費控除、高額療養費制度などを利用して自己負担額を減らすことができます。18歳未満の患者さんは、小児慢性特定疾病による医療費助成を受けられる場合があります。詳しくは、加入している健康保険の医療保険者や、お住まいの自治体にお問い合わせください。

気管支熱形成術(気管支サーモプラスティ BTBronchial thermoplasty

どんな治療?

気管支の中に内視鏡を入れて、先端に付いた電極で気管支内側の平滑筋を65度に温めます。温めることで、厚くなった平滑筋を薄くして気管支を広げるとともに、発作時に平滑筋が異常に収縮するのを抑えます。

対象は?

18歳以上の重症ぜん息患者さん

方法は?

合計3回の治療を、3週間以上の間隔を空けて行います。毎回、入院での治療になります。

(注)実施できる施設は限られています。まずは主治医にご相談ください。

生物学的製剤

どんな薬?

アレルギー反応の進行を抑制して、ぜん息の症状全般を抑える薬です。抗IgE抗体、抗IL-5抗体、抗IL-5受容体α抗体の3種類があります。

アレルギー反応の起こり方

アレルゲンが体の中に入ってくる

マスト細胞(注1)にIgE抗体(注2)がくっつきアレルゲンと結合

→ヒスタミン(注3)などの炎症物質が放出される

(注)好酸球からも炎症物質が放出される

アレルギー反応出現

気道の収縮やぜん息発作が現れる

(注1)マスト細胞
アレルギー反応を起こす原因となる細胞。
(注2)IgE抗体
免疫に関係したタンパク質。体内にアレルゲンが侵入すると増加する。
(注3)ヒスタミン
アレルギー症状を引き起こす物質。

生物学的製剤で治療すると

アレルゲンが体の中に入ってくる

生物学的製剤が、IgE抗体がマスト細胞にくっつくのをブロックしたり、好酸球の数を減らしたりして、炎症物質が出るのを防ぐ

アレルギー反応抑制

症状が抑えられる

種類 抗IgE抗体
(オマリズマブ製剤 商品名:ゾレア®
抗IL-5抗体
(メポリズマブ製剤 商品名:ヌーカラ®
抗IL-5受容体α抗体
(ベンラリズマブ製剤 商品名:ファセンラ®
対象は? 6歳以上
重症ぜん息患者さん

(注)ぜん息の原因がアレルギーであることがわかっている(アレルゲンがはっきりしている)患者さんに、とくに効果があるとされています。

12歳以上
重症ぜん息患者さん

(注)血液中の好酸球がとくに多い患者さんに効果があるとされています。

成人
重症ぜん息患者さん

(小児ぜん息には適応がありません)

(注)抗IL-5抗体と同様に、血液中の好酸球がとくに多い患者さんに効果があるとされています。

方法は? 2週間または4週間に1回、注射します。 4週間に1回、注射します。 初回と4週間後、8週間後に1回、それ以降は8週間ごとに注射します。
重症ぜん息の新しい治療
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