
医療機関でこのように肺を検査して診断します。
①問診→ ②呼吸機能検査→③画像検査など
COPD患者さんは気道が狭くなり息が吐き出せないことが特徴です。そこで、医療機関でスパイロメータという器具を使って肺がうまく働いているかを調べます。他にも病状の問診や、体の診察、胸のレントゲン撮影、血液検査などをおこない、肺の状態を詳しく調べ、ぜん息などの似た症状を起こす病気を除外したうえで診断します。
COPDと似た症状を起こす病気
COPD の患者さんの自覚症状としては、慢性の咳や痰、労作時の呼吸困難があげられます。COPD の原因の90% は喫煙であるため、喫煙歴のある患者さんにこのような症状があれば、COPD が疑われます。
問診のポイント
40歳以上で10年以上の喫煙歴があり、以下の症状があるか
COPD早期発見のためのチェック表
簡単な質問に答えて、COPD の可能性があるかどうかを調べられます。
以下の各設問に対し、ご自身に最も当てはまる回答の点数を書き込んでください。
合計が4点以上であれば、COPD の可能性があると考えられますので、早めに医療機関を受診しましょう。
COPD集団スクリーニング質問票(COPD-PS™) | |
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1.過去4週間に、どのくらい頻繁に息切れを感じましたか? | 点数 |
⃝まったく感じなかった(0点) ⃝数回感じた(0点) ⃝ときどき感じた(1点) ⃝ほとんどいつも感じた(2点) ⃝ずっと感じた(2点) |
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2.咳をしたとき、粘液や痰などが出たことが、これまでにありますか? | |
⃝一度もない(0点) ⃝たまに風邪や肺の感染症にかかったときだけ(0点) ⃝1か月のうち数日(1点) ⃝一週間のうち、ほとんど毎日(1点) ⃝毎日(2点) |
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3.過去12か月のご自身に最もあてはまる回答を選んでください。 呼吸に問題があるため、以前にくらべて活動しなくなった |
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⃝まったくそう思わない(0点) ⃝そう思わない(0点) ⃝何ともいえない( 0点) ⃝そう思う(1点) ⃝とてもそう思う(2点) |
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4.これまでの人生で、たばこを少なくとも100本は吸いましたか? | |
⃝いいえ(0点) ⃝はい(2点) ⃝わからない(0点) | |
5.年齢はおいくつですか? | |
⃝35 ~ 49歳(0点) ⃝50 ~ 59歳(1点) ⃝60 ~ 69歳(2点) ⃝70歳以上(2点) | |
合計 | 点 |
Martinez, F. J. et al.: COPD 5(2): 85, 2008 より改変
・肺にどれだけ多くの空気(息)を吸い込むことができ、どれだけ大量にすばやく吐き出せるかについて、スパイロメータという器具を用いて調べます。
・COPD かどうかを診断するための基準が1 秒率※です。1秒率が70%未満であればCOPD の可能性が高いと考えられます。
※1秒率とは、一気に吐き出したときの肺活量(努力肺活量)に対して最初の1秒間に吐き出せる量(1 秒量)の割合
スパイロメータ検査
検査結果表示例
スパイロメータの検査結果はレシートで出力されます。
COPDのリスクに応じて、[コメント]の箇所に「COPD
の疑い」あるいは「異常なし」といった評価コメントと、
詳細コメントが記載されます。
肺年齢と肺の老化度
肺の健康状態を知るめやすとして、肺年齢があります。スパイロメータ検査で調べた数値で計算し、同年代と比較して実年齢より高いか低いかで、肺の老化度がわかります。COPD の疑いがある場合は、実年齢以上の肺年齢になります。すべての医療機関で測定できるわけではないため、事前の確認をお勧めします。
COPDのリスク
評価コメント | 詳細コメント | 測定値 |
異常なし | 肺疾患の可能性は低いです。同性同年代の平均値に比べて数値が良く、今後も定期的な呼吸機能検査を続けて健康を維持してください。 | 1秒率が70%以上で%1秒量が100%以上 |
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境界領域 (現時点では異常なし) |
同性同年代の平均値に比べ数値がやや悪く、今後も呼吸機能検査を続けて注意してください。 | 1秒率が70%以上で%1秒量が80%以上100%未満 |
肺疾患の疑い (要精検) |
COPDの可能性は低いですが、同性同年代の平均値に比べて数値が悪く、他の肺疾患の疑いがあります。専門医による再検査が必要です。 | 1秒率が70%以上で%1秒量が80%未満 |
COPDの疑い (要経過観察/生活改善) |
軽症COPDの疑い。現段階で自覚症状がなくても放置すると重症化する恐れがあります。専門医による再検査が必要です。 | 1秒率が70%未満で%1秒量が80%以上 |
COPDの疑い (要医療/精検) |
中等症以上のCOPDの疑い。専門医による再検査が必須です。適切な治療を早期に行うことで症状を改善し、疾患の進行を抑制することができます。 | 1秒率が70%未満で%1秒量が80%未満 |
・胸部X 線写真にCOPD の所見が現れるのは、かなり進行してからなので、胸部X 線写真で早期に発見するのは難しいといわれています。病状が進むと、肺の構造が破壊されてX 線の通りが良くなり「肺が黒っぽく写る」、「上下方向に肺が引き伸ばされて写る」、「心臓が細長く写る」などの特徴がみられるようになります。
・胸部CTでは、肺胞が破壊された肺気腫の部分が黒っぽく(低吸収域)写ります。
・画像検査は、COPDの診断だけではなく、「間質性肺炎」や「気管支拡張症」など、似た疾患の可能性を除外したり、「肺がん」の有無を確かめたりするのに有用です。
・COPDでは心臓に負担がかかることがあり、また虚血性心疾患の合併が多いため、心電図や心臓超音波検査などが実施されます。
・COPD が進行すると、慢性的な酸素不足(慢性呼吸不全)に至ります。呼吸不全の評価にはパルスオキシメータを用いた酸素濃度(酸素飽和度)の測定が用いられています。
・COPD 患者さんがどのくらい運動できるのか、運動中にどのくらい動脈血中の酸素飽和度が低下するかを調べるために、パルスオキシメータをつけて、まっすぐな平地を6分間で歩ける距離を測ります(6分間歩行試験)。これは運動療法や薬物療法の指針を決めるときにも役立ちます。
パルスオキシメータ
動脈血中の酸素飽和度や脈拍の変化を測定する機器。イラストは患者さんの手首につけるタイプ。
胸部画像の比較
胸部X線写真
健康な人と比べて、肺が黒っぽくなり、上下方向に肺が引き伸ばされた状態がみられます。その結果、「心臓が細長く写る」()などの特徴がみられるようになります。これによりCOPDが確認できます。
胸部CT
高解像力を有するヘリカルCT(コンピュータ断層撮影)の画像で見ると、COPDの肺は、肺気腫が進んで肺組織が壊れたため、黒い部分()が広がって見えます。