- 概要
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オガサワラシジミは、小笠原諸島にのみ分布する日本固有のチョウです。小笠原では元々多数の個体が生息していましたが、グリーンアノールによる捕食などの外来生物の影響により、近年大きく数を減らしており、環境省レッドリストで絶滅危惧IA類、種の保存法で国内希少野生動植物種に指定されています。現在は生きた個体が確認されていないことから、国内で最も絶滅の可能性の高いチョウと言われております。
本研究では、オガサワラシジミが繁殖途絶に至った経緯を集団遺伝学的な背景から明らかにしました。遺伝的解析の結果、本種は生息域外保全の世代を重ねるにつれて近親交配が進むとともに遺伝的多様性が急速に減少しており、それに伴って有核精子数や孵化率が顕著に減少していました。こうした近親交配に伴う遺伝的多様性の低下によって繁殖成功が低下することは「近交弱勢」と呼ばれます。
本種は生息域外保全の過程で近交弱勢が生じた結果、繁殖途絶に至ったと結論付けられました。本研究は、各世代の遺伝情報と繁殖形質の情報を組み合わせて近交弱勢を実証した重要な成果と言えます。
また、本種の繁殖途絶の過程の原因が究明できたことで、他の絶滅危惧種の生息域外保全の際に、近交弱勢を引き起こさないための方針策定ができると期待されます。
開催日 公開日 |
2024年7月12日(金) |
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代表発表者 主催 |
中濱 直之(兵庫県立大学) |
研究代表者名 | 井鷺 裕司(京都大学) |
課題名 | 保全ゲノミクスによる保護増殖事業対象種の存続可能性評価 |
URL | https://www.u-hyogo.ac.jp/news/pressrelease/20240712press.html https://www.hitohaku.jp/research/h-research/20240712news.html |