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ベストプラクティス ベストプラクティス

ベストプラクティス事業
社会の共有財産として森林・里山を保全し、次世代に引き継ぐ
[ 認定特定非営利活動法人 時ノ寿の森クラブ ]

  • 活動名森林・里山を社会財として「シェア」し、持続可能な森林保全を目指す
  • 助成メニュー2019~2021年度 ひろげる助成
  • 活動分野森林保全・緑化
  • 助成金額(千円)(’19)2,400 (’20)2,479 (’21)2,700
  • 住所〒436-0341 静岡県掛川市倉真7021
  • TEL0537-28-0082
  • E-mailinfo@tokinosunomori.com
  • URLhttp://tokinosunomori.com

行政・企業・市民を巻き込んだ
森林・里山を守り、活用する仕組みづくり

活動について

森林・里山を守る仕組みをつくり、市民に開放する

静岡県掛川市倉真(くらみ)地区には、かつて自然の恵みを享受しながら生活を営んでいた集落がありましたが、廃村となったことで人が立ち入らなくなり、森林が荒廃してしまいました。水源林である森林が荒れてしまうと下流地域が災害に巻き込まれるリスクが高まります。時ノ寿の森クラブでは、森林・里山の持続的な保全体制をつくり、社会全体の共有財産として分かち合い、地域の自然環境や生物多様性を将来世代に引き継いでいくことを目的に活動を始めました。「山の大切さを社会に訴え、森林を守り、開放することで、子どもや家族、アウトドア初心者の方でも、誰もが安心して自然体験ができる環境づくりを目指しています」(理事長 松浦成夫さん)
 森林・里山の保全活動の最大の課題は、対象となる森林のほとんどが小規模民有林であり、永続的な保全・管理を行うためには所有者の理解と承諾を得る必要があることでした。また、団体と所有者の合意だけでなく、行政や企業、市民を巻き込む必要があります。そこで民有林の所有権をそのままに、時ノ寿の森クラブが管理を受託できる体制が構築できるよう活動を行ってきました。そして森林・里山を市民へ広く「シェア」(分かち合い)するための仕組みづくりを行っています。「里山の場合、ただ保護するのではなく、手を入れ利用していかないといけない。どういう仕組みづくりをすれば里山を守れるのか、検討を重ねたのがこの3年間でした。」(事務局長 大石淳平さん)

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民有林の森林整備
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適切な間伐による森林保全
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小学校低学年向け自然体験プログラム「森のキッズ」

2活動の主な成果

多くの人が森林保全や自然体験プログラムに参加

行政や企業と連携をしていくため、まずは静岡県が実施している「しずおか未来の森サポーター制度*」を活用し、静岡県・掛川市と県内の企業との間でパートナーシップ協定を結びました。「パートナーシップ協定を結ぶことにより、企業活動の一環としてだけでなく、提携企業の社員やその家族が休日にきて森林保全活動に参画するようになったり、福利厚生のひとつとして森林を気軽に活用して親しんでいただくなどの成果が生まれています。」(大石さん)さらに森林・里山を誰もが気軽に利用できるように、保全や利用の制度を設計し、「人と森を結ぶプラットフォーム」を開設しました。
 森林保全体制の制度設計と並行し、市民ボランティアや企業と一緒に、森林の手入れや植樹・育樹活動も推進しました。その一環として、地元大学の防災工学の教授から指導を受け、森林を流れる河川の水量モニタリング調査も実施しています。雨が降ることによりどれだけ水量が増え、減っていくかを計測します。「都市部の河川の源流は森林にあります。森林が荒廃していると、雨で一気に水量が増え、災害が起きやすくなります。この調査により、森林の保全が防災につながることを明らかにします。」(大石さん)
 森林・里山を活用するプログラムとして実施されたのが、「森のようちえん」。これは3~5歳児を対象に、自然とのふれあいの中で子どもたちの発達と発育をうながす活動です。「森のようちえん」は幅広い年代に広がり、小学校低学年を対象とした「森のキッズ」、0~2歳児を対象に保護者も一緒に遊べる「森で一緒」、親子や大人が個人でも参加できる「里山塾」などを開催。参加者が気軽に、楽しく森で過ごせるよう、ゲストハウスなどの施設整備も進んでいます。森林・里山の活用は、都市と山村のエコツーリズムの開催や、企業やフリーランスのワークスペースとして森林を活用する「里山オフィス」など、新たな広がりを見せています。
*静岡県が森づくりを行う団体を紹介し、活動を支援する制度

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企業と協働の森林保全
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乳幼児と保護者のプログラム「森で一緒」
活動のポイント
行政との連携を強化しステークホルダーとの接点をひろげる、
事業収入の柱を設計する

多様なステークホルダーと連携を進めていくために、まずは行政との連携を重視しました。行政にはSDGsへの貢献や森林保全活動に参加したい企業から問い合わせがきます。行政にこちらの理念や実績を示し信頼関係を築いておくことで、企業に私たちの活動を紹介してもらうことができ、企業との連携が進みました。また、助成終了後に自立して活動が進められるよう、いかに事業収入を得ていくかを意識して活動していました。私たちの場合、「森のようちえん」が事業収入の柱の一つになると考えているので、よいプログラムを提供し、利用者の満足度により、社会に広がるように努めています。(大石さん)

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3助成終了後の活動

時ノ寿の森を、日本中の森林を守り、親しむ、モデルケースにしたい

助成活動開始時の一番の課題は、小規模民有林の管理の問題でした。これまで森林の保全と利活用を推進してきましたが、「森林経営管理制度」が実現し、解決につながりました。この制度は放置された森林の所有者の意向を掛川市が調査し、管理できない森林を市が受託。さらに掛川市から森林保全をする団体や林業経営者にその管理を委託するものです。この制度を利用して、源流域の民有林約25haは、時ノ寿の森クラブによって保全管理が始まっています。
 「私たちの活動を、個人が所有する森林・里山を地域の人や遠方の人も含め皆で守り、利用していくモデルケースにしたい。それがこれからの目標です。」(大石さん)地域の人口が減少していく中、土地や森林をどう守っていくかは日本社会の共通の課題です。時ノ寿の森クラブの森林の保全・活用モデルを全国に広げ、それぞれが地域を巻き込んだ活動を進めることで、社会の公共財として森林がより「シェア」されていくことを目指しています。
「森林は国土の7割を占め、未来への大切な資源です。私たちの体験を通じ、森林を活用するための公的な支援や、企業・大学などと連携するためのノウハウを、各地に伝えていきます。」(松浦さん)
 静岡・掛川から、全国の森へ。森林保全・活用の先行モデルとして、時ノ寿の森クラブの活動は広がっていきます。

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「森のようちえん」親子体験
地球環境基金から
行政・企業と連携して森林を保全していくための制度を設計し、持続的に保全していく体制を構築できたことは大変評価できます。さらに市民と実施する保全活動や自然体験プログラム等をつくり、多くの人が関わるようになりました。日本の森林・里山の保全と利活用のモデルとして、他の地域にも広がっていくことを期待しています。

地球環境基金 Japan Fund for Global Environment

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