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B1-03 データ駆動型高度選別システムの構築

研究開発責任者

井関 康人(三菱電機株式会社)

研究開発概要

プラスチックの静電選別は、図1に示すようにプラスチックの帯電特性の違いを利用して選別する方式で、光学選別で対応できない黒系、小粒径(5mm以下)のプラスチックにも対応できるなど、汎用性が高く高度選別方式として有望である。しかし、オペレーションの難しさから、現状はあまり普及していない。リサイクルにおいては業界によらず常に同じ状態の廃棄製品が回収されてくることはなく、それらを破砕して得られる多様な種類の混合プラスチック片(原料)の混合比は常時変動する。静電選別においては原料の混合比が変わるとプラスチックの摩擦帯電量が影響を受け、電極間での各種プラスチックの落下位置が変わる。このため、純度・回収量を高い状態で維持するには、電極電圧や回収容器の仕切り位置の調整等の高難度なオペレーションノウハウが必要になる。原料変動に対応したオペレーションノウハウがないと静電選別の性能を最大限に引き出せず、再生材の品質を安定化できない。よって、静電選別を家電、自動車、容器・包装など幅広い分野でのリサイクルに展開するには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の多様な種類の使用済プラスチックの組成変動に対応した機能、及び高い操作性を備えた選別装置・システムを実現する必要がある。

そこで、本研究では、プロセスやバリューチェーン上下流のデータを活用し、図2に示すようなAI等によりオペレーションを最適化・自動化したスマートな静電選別システム(データ駆動型高度選別システム)を実現し、広く社会実装することを目指す。具体的には、①静電選別適用範囲拡大のための装置開発、②オペレーション支援のためのセンシングと選別条件制御の開発、③CE共有データ基盤システム(日本版DPP)との連携構築に向けた検討を実施する。本プロジェクトの成果として、図3に示すように多様な種類・形状のプラスチックの高度選別による高品位な再生材の動脈側への安定供給、及び情報共有による動静脈連携強化が期待される。

静電選別装置(研究開発項目①)、センサーおよび選別条件制御機能開発(研究開発項目②)については、構造・機構・方式のアイデア立案と原理検証(2023年度末)、試作・機能検証(2024年度末)、選別・センシング性能向上(2025年度末)を達成し、2026年度から2027年度にかけて実機検証・改良を行い、プラスチックの回収率80%達成(2027年度末)を目指す。

CE共有データ基盤との情報連携のインターフェース(I/F)仕様検討・開発(研究開発項目③)については、各種センサーとの通信仕様およびシステム実現方式等の基本仕様の立案(2025年度末)、データ収集/配信/制御方式の具体化(2026年度末)、実機での連携実証(2027年度末)を達成する。

進捗・成果

静電選別装置(研究開発項目1)

帯電ドラム、フィーダー、電極、分離回収器、各種センサー等から構成されるデータ駆動型静電選別装置の原理検証を行うための検証機を設計し、主要部分を製作、周辺機器の試作に向けた仕様作成を完了。フィルム状のように比電荷が高いプラスチック片の電極へ貼りつきによる異常放電の発生を低減可能で、高い電界強度をプラスチックに印加可能なローラ状の電極のシミュレーション設計と試作を実施し、取り付け性を確認。

センサーおよび選別条件制御機能開発(研究開発項目2)

通過型ファラデーケージ方式による帯電量センサーの設計を完了、試作を実施中。プラスチック種と重量をセンシングするためのプラスチック種・重量自動計測システムを設計し試作を実施。投入したプラスチック片に対し、近赤外スペクトルと重量を自動で計測できることを確認。近赤外スペクトルに対し1次微分と機械学習を適用し、プラスチック種(ABS・PS・PPの3種)を99 %の精度で識別できることを実証。