B1-04 高品位再生プラスチック材料の製造プロセス開発
研究開発責任者
今井 麻美(株式会社富山環境整備)
研究開発概要
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本研究開発では、プラスチックリサイクル素材の国内市場利用拡大を図ることを基本目的とする。
富山環境整備が取り扱う、家庭等から排出されるプラスチック製容器包装材(容リ材等)を原料として、質の高い再生プラスチックペレットの技術開発及び製造を行う。利用性の高いポリプロピレン(PP)を対象素材として、容リ材等由来の現行ペレットがバージン材に比べて品質が低下している原因及び劣化のメカニズムをSIP内の他サブ課題参画機関と連携して特定し、性状・状態を科学的に把握する。それらを基に、選別プロセスでは成分濃度(純度)の高いPP系の単一素材を得るための条件を設定し、洗浄・混練・異物除去・ペレット製造の各プロセスの見直し・最適化により、品質低下・劣化を抑制できるような製造技術を開発する。
後プロセスでは、さらなる異物除去と均質化のための混練を実施し、現行の再生PPペレットよりも更に高品位化した再生PPペレット(高品位再生PPペレット)を安定的に製造するための設備導入と技術を確立する。再生ペレットを日常的に連続処理で生産する中、ロット間バラツキを低減(均質化・偏差を小さくする)ための製造プロセス、管理手法が求められている。そこで、再生ペレット製造後の仕上げ工程に攪拌(回転式タンブラー)を追加し、ペレット均質化効果(偏差が小さくなる)を確認する予定である。 - 高品位再生PPペレットをベース材料に用いて、フィラー添加・機能性付与の配合評価が行える混練・改質プロセスを整備し、自動車業界・家電業界向け配合材料として容リ再生材の本格実用化を目指していく。また、SIP内の他機関から提供される回収プラスチックや非容リ廃プラスチックについても同プロセスを適用し、自動車向け高品位再生材としての利用可能性を検証する。
- 得られた成果を容リ材等ポリエチレン(PE)にも応用し、高品位再生材PEペレットから製造した身近な製品(一般消費財の例としてごみ袋)を社会へ還元し、再生材への消費者意識を変え、再生材使用製品を抵抗なく利用できるような資源循環型社会を構築する。
- 将来的には本研究で得られた技術を同業リサイクル事業者にも技術提供し、高品位再生材の国内供給体制を整備することで、国内での再生材利用率を向上させる。

研究開発概要図
進捗・成果
- 原料であるプラスチック製容器包装材(容リ材等)の排出傾向が季節で異なると仮定し、再生ペレットの物性変動を確認した。2月と5月、8月、12月にサンプリングした再生ペレットで各種物性試験を行い、結果を比較したところ、選別・洗浄・造粒工程を経ることで、物性値に大きな変動はみられず、季節による再生ペレットのバラつきへの影響はないものと判断した。ロット間の物性値の変動については目的樹脂の純度や異樹脂のコンタミ状況、異素材の分散状況等が影響していると考えられ、連続成型のためには均質化・安定化が求められていることが需要側との意見交換から明らかとなった。タンブラーを用いて攪拌することで、ロット間のバラつき(標準偏差)は小さくなったが、物性を均質化できるとまでには至っていない。ロットの考え方や管理手法の確立に向けて、引き続き検討を行う予定である。
- ELV規制のX to Car適用評価として、部品成型時の金型のガスによる腐食、収縮率、ショートショット、外観不良(シルバーストリーク、色ムラ)、臭気低減が解決すべき課題である。引き続き、臭気原因物質の特定、ペレット製造段階における洗浄工程・造粒工程の改善効果の確認、成型条件や金型改良、成型後の加工処理の追加等、供給側(再生ペレット製造)・需要側(コンパウンド、成型製品製造)の両者と共に検討を進めていく予定である。