本文へ

C1-02 再生プラスチックの循環性向上のための品質分析データバンク構築

研究開発責任者

高田 昌樹(東北大学)

研究開発概要

本研究開発プロジェクトの目的は、再生材の物性・構造計測、計算およびデータ駆動科学の融合による再生材の品質分析・品質改善を行い、循環性向上に必要な再生材品質データバンクを構築することである。
具体的な実施内容として、再生ポリプロピレン(PP)を中心とした再生プラスチック(再生材)を対象に物性・構造計測に加えて、分子構造モデリングによる物性・構造予測を行い、その結果に基づき品質改善を行う。また、ELV規則案※1への対応に向けた再生材から自動車向け再生プラスチックを生み出すモデル(X to Carモデル)の構築を目指して、自動車に適応できる高品質な再生プラスチックの品質分析・品質改善を実施する。
事業終了時までには、プラスチック情報流通プラットフォーム(PLA-NETJ)に関わる再生材作製要件(廃プラスチックの回収地域・分別方式・日時、ペレタイズ日時・環境など)のデータとも関連付けて、物性・構造データを10,000件蓄積した再生材のデータバンクを構築する。

再生材データバンクの運用においては、再生材ペレットの受け取り(入金)/セキュリティ付き計測データの提供(出金)窓口を設置する。リサイクラーへの計測データの提供にあたり、データ駆動科学(ベイズ推定による欠損データの補完と自己組織化マップ(SOM)によるクラスタリング)を導入することにより、回収地域・日時、分別方式などで日々変化する再生材および品質改善を検討した改良再生材の物性-構造の相関性を分析し、再生材の物性劣化メカニズムを明らかにするとともに、分析結果とその解釈(研究者による科学的知見、利子に相当)を添える。SOMのクラスタリングデータにはバージンプラスチック(バージン材)の計測データも蓄積することで、再生材の物性・構造がバージン材に対してどの程度の位置づけにあるのかが明確になる。この分析データを、再生材のグレーディングにも活用していく。
※1 End-of-Life Vehicles規則案 :使用済み自動車の廃棄やリサイクルに関するEUの規則

進捗・成果

実施項目1:
再生材の品質分析:バージンPPは20種類、再生PPは容器包装、家電、自動車、ペットボトルキャップ、コンテナ、バッテリーケース由来等を100種類程度入手し、物性・構造データを取得している。
実施項目2:
再生材の品質改善:MFR※2を調整しながらバージンPPとの配合⽐を変化させた新たな再⽣PPのポリマーブレンド開発の検討を開始した。ブレンド材の射出成形試料を評価し、⾼結晶性のバージンPPの配合により効率よく改質されることがわかった。
※2 メルトフローレート(溶融した樹脂の流れやすさを表す指標)
実施項目3:
再生材品質データバンク構築:品質分析を行ったサンプルのうち65種類のバージン材を含むPPに対してSOMを作成し再生材のグレーディングを行った。バージンPPが含まれる領域をA領域と設定した。再生PPについては、医療系PIR※3材、海外製の再生PP、バッテリーケース由来の再生PPがA領域に配置された。A領域に含まれる比較的高品質な再生PPは、ペレットの彩度が高い(ナチュラル、白色系)、異物が少ない、ポリエチレン等の異樹脂の混入がない等の特徴があり、力学特性(とくに破断伸び)が優れていることがわかった。
※3 Post Industrial Recycled 産業用プラスチックのリサイクル
最先端放射光施設のナノテラスを利用して再生材の物性、構造のデータセットを作成し、再生材のデータバンクを構築。

研究開発概要図