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サーキュラーエコノミー No.54 2023年3月発行

地球環境基金便り No.54 (2023年3月発行)

サーキュラーエコノミー

総括インタビュー

ライフスタイルが変わるサーキュラーエコノミー

SDGsや脱炭素、生物多様性に続き、近ごろ話題の「サーキュラーエコノミー(循環経済)」。地球環境と経済活動を両立させるために、使い手にも作り手にも発想の転換が求められています。新しい循環型社会を作るために私たちは何をすればいいのでしょうか?

「地球の有限性」をベースにモノに対する発想の大変革が進行中

人類の活動が地球の許容量を超えつつある

 サーキュラーエコノミーとは「たくさん作ってたくさん売る」消費型ビジネス社会から脱し、プラスチックに代表されるリサイクルなどの「循環」が、あたりまえに成り立つ経済・社会を目指す考え方です。環境問題の枠にとどまらず、社会の仕組み自体を変え、環境と経済を両立させていく点が特徴です。EUが牽引役となり、今、アメリカ、アジア、アフリカ、中南米にも広がっています。
 これまでの3R(リデュース・リユース・リサイクル)などの環境への取り組みは「ごみをどうしようか?」という問題でしたが、サーキュラーエコノミーは「地球をどうしようか?」という視点で考えます。背景にあるのは、地球の有限性です。人類の活動が地球の許容量を超えつつある危機感があります。現在の経済活動のままでは、2060年には金属や化石燃料などの材料資源の需要が2.1倍になるという調査結果※があり、それらがモノになり消費され廃棄された場合の環境汚染は深刻で、人類に甚大な影響を与えることが予想されます。地球の有限性の範囲内で人類が豊かに暮らし続けるためには、世界規模での対策が不可欠です。

※経済協力開発機構(OECD)「2060年までの世界物質資源アウトルック」2018

一人ひとりが少しずつ面倒を引き受けていく覚悟を

 サーキュラーエコノミーは、私たちのライフスタイルに大きな意識変革を求めます。ユーザーは「消費者ではなく使用者として」の行動変容が欠かせません。
 左ページの「車」の例にあるように、使い手はモノを買って消費するのではなく、所有するかしないかを含め、さまざまなスタイルで、有限であるモノを循環させ使います。作り手は、モノを作る時点で再利用を前提として、修理しやすいエコ設計にしたり、価値あるユーズド品を生む仕組みを考えたり、新品販売だけでないビジネスを展開します。これにより、モノを捨てるタイミングやパーツが減り、多くのモノがごみではなく資源として循環されます。
 サーキュラーエコノミーの実現には、私たち一人ひとりが使い手として、ちょっとした面倒を請け負うことが必要です。カーシェアリングやランドリーの活用、プラスチックの分別などはどうしてもひと手間かかります。しかし、これらをみんなが引き受け、習慣化できれば世界は変わります。そのためには「環境のため」だけではなく、「こっちのほうが便利だから・素敵だから」といった体験価値を伴うことが大切でしょう。サーキュラーエコノミーが世界のマジョリティになれば、未来を変えることができるのです。

身近な「車」を例に、サーキュラーエコノミーの実践について
「使う人/ユーザー」と「作る人/メーカー」の立場から見てみましょう。

そもそも車を所有するか?しないか?から考えてみることも、サーキュラーエコノミーの実践の第一歩。長期レンタルするカーリースや近年増えているカーシェアリングなど、じつは幅広い選択肢が考えられます。「所有する」以外を選択する人が増えると、そこにまつわるサービスによって新たな雇用が生まれたり、企業の競争力が上がったりして、経済を回すことができます。所有する際にも、新車か中古車か、ガソリン車か電気自動車かなど選択肢はさまざまです。

そもそも車を作る段階で、修理やパーツ取り替えのしやすさ、他の製品と組み合わせてアップサイクルや再製造ができる仕組み、素材リサイクルのための材質成分表示などを考えておくことが重要。もちろん長く使えることも大切です。

お話を伺ったのはこの方

東京大学大学院 工学系研究科
人工物工学研究センター 教授

梅田靖さん

東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻博士課程修了、博士(工学)。エコデザインをテーマにライフサイクル工学、持続可能社会シナリオ設計方法論などを研究。製造業における環境政策や環境ビジネスに精通。

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