地球環境基金便り No.54 (2023年3月発行)
平野レミREMI HIRANO
料理愛好家、シャンソン歌手。
“シェフ料理”ではなく“シュフ料理”をモットーに、テレビや雑誌などでアイデアあふれる料理を発信。最新刊『エプロン手帖』(ポプラ社)をはじめ、著書は50冊以上にのぼる。
子どもたちが小さい頃は、残さず全部食べさせるようにしてたわね。魚の骨や頭も、フライパンでカリカリに焼いてフードプロセッサーで粉々にして、白胡麻や海苔を入れて、ふりかけにしたりしてね。それから、宿題をするときは必ずキッチンで。私が台所でいろんなことをやってる姿を日常的に見せていたの。子どもたちがお腹を減らしていても、「もうちょっとよ、待ってて」って、包丁でトントン切る音だったり、フライパンでジュージュー炒める音だったりを全部聞かせて。ワクワクしながら待つ時間も、ごちそうよね。そうやって育ったせいか、息子たちは今でもちゃんと料理をするんですって。やっぱり家の味って絆を生むものだと思うのよ。それを私は“ベロシップ”って呼んでいるんだけど、うちの場合はフランス人の祖父がよく作っていた、牛肉とトマトを炒めた“牛トマ”っていう料理が、両親、私、息子たち夫婦、孫まで5世代も続いてる。舌でつながってるのよ!これも「食育」のひとつよね。子どもたちにはできるだけ手作りのものを食べさせてあげたいし、食にまつわる「どうして?」っていう質問にはいつだって答えてあげたいなって思ってる!
私、用が済んだモノをそのまま捨てるってことができないのよね。例えば、子どもが使わなくなった色鉛筆でアクセサリーを作ったり、飲み終わったワインのコルクを板や花瓶に貼って額縁や植木鉢を作ったり。それから、もう付けなくなったネックレスを、カーテンを束ねるタッセルにしたりもしていたわ。元の用途で使い終わったから捨ててしまうのではなくて、ほかのことに使えないかしら?って考えてみるの。
ほかにも、飲み終わったペットボトルは切り分けて、底の部分をゼリーの型に使ったりして。今は100円ショップで安く買えるけれど、昔はそういうのもなかったし、わざわざ高いものを買うのも大変だし。ペットボトルの底は種類によっていろいろな凹凸のカタチがあるから、かわいいし、おもしろい。
そういうことを、今のように“サステイナブル”って言葉がなかった頃から、私はよくやっていたの。捨てる前に「何かに利用できないかな?」って考えるのってすごく楽しいわよ。
私は昔から「もったいない」より「おもしろい」が先に来るの。思いついたらすぐに動いちゃう。食べ物は何をしたって食べられるんだから、大きな気持ちでやっちゃうのがいいわよ!うまくいかなくても失敗なんかじゃない。「あんまりおいしくなかったね」ってみんなで笑えばいいの。
そら豆の豆を包んでいる薄い皮があるじゃない?この間、あれを集めて素揚げとポタージュにしてみたの。素揚げはちょっと固くて食べにくかったけど、コトコト煮込んだポタージュはすごくおいしくて、孫たちにも大好評だったわ。
あとは、紅茶の出がらしも、普通は淹れたら捨てちゃうわよね。でも、私はそれを取っておいて、小麦粉や卵と混ぜてオーブンで焼くの。おいしい紅茶クッキーのできあがりよ!それをまた紅茶を飲みながら食べて、残った茶葉でまたクッキーを焼く。そうやって、ずっと循環していくの。だから、お客さまに紅茶を出して茶葉が残ると、いつも心の中で「ラッキー」って思ってる。
そんなふうに、大根やじゃがいもの皮だって、とうもろこしの芯だって、普通なら捨てちゃうようなところも、私はどんどん料理に使っちゃう。おいしく食べられてごみも減るから、一石二鳥よね。
スーパーで食材を買うときは、見切り品や賞味期限が近いものを選ぶようにしてる。それから、野菜でも果物でも形の悪いものを買うの。そういうものを買うことが作っている人たちのためになる。生産者を応援する気持ちよね。規格外のものが捨てられちゃう世の中にならないように、消費者が賢くならなきゃダメよ!
中日新聞社提供
[左]食材を無駄なく使うだけでなく、牛乳パックやペットボトル容器を調理道具として再活用することもレミさんにとっては日常茶飯事。「牛乳パックを使った押し寿司は、手土産にもぴったりなの。だって立派な箱でもらうより、気軽でいいでしょ?」
[右]食・健康・環境などのイベントに登壇することも多いレミさん。2023年1月には農林水産省の補助事業「お米についてまじめに考える。みんなの未来とお米のカンケイ」イベントにも登場。
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