
地球環境基金便り No.57(2024年12月発行)
きっかけは、団体内の世代交代でした。活動の強力な牽引者だった初代理事長から受け継いだ「いきもの元気・子ども元気・漁師さんも元気な中津干潟」を100年後にも残すためには、関係者全員が納得できるしっかりとしたビジョンが必要でした。
そこで、私たちは「中津干潟(なかつひがた)」や「野依新池(のよりしんいけ)」を公的保全の枠組みへ登録することを目標に掲げました。登録には生物群の種の同定といった基礎的調査や、地域住民の深い理解も求められます。時間も資金も不可欠であることから、3年間継続的に支援してもらえる地球環境基金の助成金を活用しました。
希少な生物群が息づく重要湿地「中津干潟」
まず、助成金申請を通じて、これまでの活動の見直し・棚卸しをできたことが大きかったです。それにより公的保全への登録という、明確な中間目標を定めることができました。助成期間中は、登録に向けた「基礎調査と分析」と、広報イベントやキャンペーンなどを通じた「関係者づくり」に注力。3年間で3冊製作した「調査レポート」のおかげで、行政担当者や研究者をはじめ、広く環境保全の関係者たちと、科学的な裏付けをもって対話できるようになったことは、大きな財産です。
これらを実現するためには資金力が不可欠で、地球環境基金の助成金は有用なものだと感じています。
公的保全への指定・登録を後押しした「調査レポート」
活動が25年を迎えた2024年、ベッコウトンボが中津市「天然記念物」に、尾無(おなし)の湿地が環境省「自然共生サイト」に認定されました。「ラムサール条約」についても県や市の議会で話題に上がり、登録が現実味を帯びて動き出しています。3年間の助成期間での活動が、着実に実を結んでいます。