地球環境基金便り No.58(2026年1月発行)
2014年の発足以来、全国各地で地域主導型のエネルギー事業を支援。実践を通じた幅広い知見やノウハウを集約・共有し、地域GX(グリーントランスフォーメーション)を推進している「全国ご当地エネルギー協会」。地球環境基金では2016年より、活動を助成しています。地域が主役となるエネルギー事業は、地域脱炭素の要です。現在、長野県で進行中のソーラーシェアリング「野辺山営農ソーラー」の活動とともに、事業を成功に導くポイントも紹介します。
2011年の東日本大震災、翌年のFIT法(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)施行で、地域主導型のエネルギー事業は急速に進展しました。全国で50地域以上もの事業化に結びつき、2014年の当協会の発足にもつながりました。
しかし、それから10年以上が経ち、この先の再エネ推進のために、非FIT環境でも持続可能な、新しい地域エネルギーモデルが求められています。
再生可能エネルギー開発における、世界的な指針「コミュニティパワーの三原則」をご存じでしょうか?
1つ目は「地域が所有する」。地域住民がオーナーとなり、当事者意識を持ち、自分ごととして考えること。2つ目は「地域が重要な意思決定に参加する」。外の人たちが決めてしまうのではなく、地域の人たちが決めるということ。3つ目は「地域に便益が還元される」。経済的メリットはもちろん、例えば評価される社会的メリット、住民の誇りになる精神的メリットなど幅広いよいことが地域にもたらされること。
これらが本当の意味での地域主導のエネルギー事業に欠かせません。
持続可能で自立した地域づくりを進める重要な柱のひとつとして、世界的にも注目されているのが、農作地の上に太陽光パネルを設置する、営農型太陽光発電「ソーラーシェアリング」です。
太陽光パネルは農作物に影響を与えない遮光率で設置されるため、お米はもちろん、たっぷりの太陽光を必要とするトマトも含め、日本で栽培されるほぼ全ての主要作物品種で問題なく栽培可能です。すでに全国1500カ所以上で実用化されています。
ソーラーシェアリングによって発電した電力を売電することで、農家は収入を得ることができ、自家消費に使えばエネルギーコストを削減できます。農業が主であることから、営農型太陽光発電というより、「太陽光活用型農業」と表現したほうが実情に近いかもしれません。
現在進行中のプロジェクト、長野県「野辺山営農ソーラー」では、標高1350メートルの高原に広がる約3ヘクタールの農地に、ほうれん草などの55棟のハウスを並べ、その頭上およそ6メートルに太陽光発電パネル約3000枚を設置し、電力の全量を売電しています。まもなく敷地内の建物をエネルギー自立型施設にリノベーションした「野辺山ヌーヴォー」が誕生する予定です。ブルーベリーの栽培・収穫を中心に観光農園化するとともに、カフェなどを併設する地域のコミュニケーション拠点になります。
プロジェクトの中心人物は、30代の若き農家の宮下さんです。同世代の農家仲間、既存のご当地電力「上田市民エネルギー」、電気・農作物の供給先となる「生活クラブ生協」をはじめ、村の農業委員会、長野県、銀行、金融公庫など多様な分野の人や組織が連携し、長野県第1号となるソーラーシェアリング&地域コミュニケーション拠点の、持続的な発展に向けた協業が進んでいます。
太陽光を上下でシェアしてフル活用。上で、約3000世帯の1年間分の電力を発電。下では、ほうれん草などの収穫が可能です。
八ヶ岳を望む「野辺山営農ソーラー」。標高1350mの高地に3ha(25mプール100個分)の広さで発電と農業を展開。
私たち全国ご当地エネルギー協会は、事業立ち上げの初期段階で、主体者の右腕となって一緒に動きをサポートしますが、目標はあくまでも事業が軌道に乗り、自立してもらうことです。はじめは協会を通じて、地域外の専門家などの力も借りますが、並行して、地域内での人材発掘にも力を注ぎます。
野辺山のプロジェクトでも、設計者、デザイナー、カメラマンなど事業推進に必要な協力者を地元で増やしているところです。
数多くの地域エネルギーを支援してきた経験から、やはり大事なのは、人が見える・顔が見えるということです。ハード(発電施設)ではなくソフト(人・コミュニティ)が育たないと事業は続きません。地域エネルギーの普及と持続には、年齢・性別・立場の異なる多様なプレイヤーが必要です。
当協会としても、今後は女性、若者、企業人、シニアといった新規層へのアプローチに注力していきます。全国各地で地域エネルギーへの関心を高め、地域エネルギードミノ・脱炭素ドミノに向けた連携拡大を、さらに進めていきたいと思っています。
わが家は、春はレタスやキャベツ、夏は花の苗を栽培する農家です。耕作放置されていた農地の再生と持続的な農業を目指し、野辺山にソーラーシェアリングを計画したのが2017年。そこから丸5年をかけて近隣の250戸以上の人たちと対話し合意形成し、その後、約2年をかけて井戸を掘ったり、地中の石を掘り除いたり、農地を整備してきました。
人、水、石という壁に直面しながらも、ここまでやってこられたのは飯田さんをはじめ、多くの人とのつながりと支えがあったからです。
営農ソーラーは、農業ありき。農作物に重きを置いて、ケチケチせずに設計することが大事です。ソーラー発電の収入があるおかげで、思い切ってハウスも設置できました。
一緒に営農していく土屋さんは4つ年下で、地元の消防団仲間です。我々、若い世代の挑戦を、多くの人が応援してくれています。野辺山ヌーヴォーでは、妻との二人三脚で、ブルーベリー栽培やカフェ営業を行う予定。これからが楽しみです!
adobe
readerダウンロード