本文へ
ベストプラクティス ベストプラクティス

ベストプラクティス事業
地域の価値を高める、都市と山村集落を結ぶ交流事業
[ 認定特定非営利活動法人 五ヶ瀬自然学校 ]

  • 活動名世界農業遺産の里で行う耕作放棄地対策・環境保全型農業価値理解促進のための交流活動事業
  • 助成メニュー2019〜2021年度 ひろげる助成
  • 活動分野総合環境教育
  • 助成金額(千円)(’19)3,000 (’20)3,100 (’21)3,100
  • 住所〒882-1201 宮崎県西臼杵郡五ヶ瀬町大字鞍岡2840番地
  • TEL0982-73-6366
  • E-mailgns@gokase.org
  • URLhttps://www.gokase.org

都市と地域が支え合う山村モデルで、
世界農業遺産の地を盛り上げる

活動について

地域の価値を再認識するプログラムの確立

宮崎県北部の山間地域である高千穂郷・椎葉地域は、2016年に国連食糧農業機関(FAO)から世界農業遺産に認定されています。山間地の振興モデルとして期待されていますが、過疎化・高齢化の進展や、その世界的な価値を住民自らが認識していないという課題がありました。
 五ヶ瀬自然学校は、高千穂郷・椎葉地域の活性化を目指して、関係人口を増やし、都市と山村で支え合う持続可能な山村モデルの構築を図る活動を進めています。
 都市と山村を結ぶために、まず農山村への入り口をつくるためのプログラムとして「フットパス」を実施しています。これは、地域を歩いて豊かな自然や農林業とふれたり、お祭りや食文化など地域ならではの文化を楽しむことができます。孤立した集落にフットパスコースを作り、都市住民が訪れるきっかけになりました。
 さらに関係人口を増やすために、耕作放棄地を活用した農業体験のプログラム「農家のお手伝い」と、現地での直接支援はできないけれど寄付をすることで地域を支援する「オーナー制度」を確立しました。また、「フットパス」や「農家のお手伝い」の実施に合わせ、生態系の価値や自然と人との共生についての理解を促進するために、スマホアプリを活用して取り組める「生き物観察会」や日本の伝統的な養蜂について学んで実践する「みつばち楽校」も実施しました。「生き物観察会」では、観察の成果をもとに専門家の指導で小学校の教本を作成し、地域学として子どもたちの理解を促進しています。また、「みつばち楽校」では、SNSを介して参加者それぞれが制作した巣箱の状況を共有しています。

図
地域を歩き自然や文化にふれる「フットパス」
図
「みつばち楽校」での巣箱作りワークショップ
図
耕作放棄地を活用した「農家のお手伝い」

2活動の主な成果

住民を巻き込んだ魅力づくりで、若い世代が帰ってきた

「これまで地元の五ヶ瀬川などでカヌーツアーを実施するなど、都市と山村を結ぶイベントを開催してきた実績があります。そのノウハウと地元住民とのネットワークを通じて、地域のみなさんが参加するプログラムを実施することができました。」(理事長 杉田英治さん)
 五ヶ瀬自然学校のプログラムは、様々な形で地域の活性化に貢献しています。各プログラムに、ガイドやコーチとして地元の人々が参加し、都市からの参加者とふれあうことで、都市住民の人々には山村地域の自然や暮らしへの理解と共感を深めてもらうとともに、地域住民の人々には「世界農業遺産の里」に対する誇りと地域の魅力を磨き上げる機運が醸成されました。また、一連のプログラムを通じて生物多様性や環境保全型農林業への意識が高まり、環境保全に取り組むきっかけとなりました。参加者が地域のお店や宿泊施設を利用することで、地域の経済にも貢献しています。
 「活動の一番の成果としてあげられるのが、若い世代のUターンやIターンの動きが出始めていることです。フットパスや農家のお手伝いで地域の魅力を再発見した20代の若者たちが、この地域に移住し、農業や林業の後継者を目指して学んでいます。地域の資源を生かした仕事を作り、雇用を生み出すことが、過疎や耕作放棄地・農林業の後継者不足の解決につながります。次々と若い世代を入れていきたいですね。」(杉田さん) 本活動で若手プロジェクトリーダーとして活躍する岩谷智友璃さんもこの地域に魅了されてJターンし、活動に参加するようになったひとりです。

図
フットパスコースである鳥の巣棚田を守るお二人
図
桑野内集落にて芋の苗植え作業をする岩谷さん
活動のポイント
地域を主役にするために、前向きな住民たちとつながること

私たちのプログラムの推進には住民との連携が不可欠ですが、誰もが参加してくれるとは限りません。まず、地域の課題解決に取り組む人、地域の中心的な人物とつながることです。地域のキーになる人と連携することで、人とのつながりが大きくなり、協力者が増えていきます。また活動を多くの人に知ってもらうために、チラシを作って道の駅で配布するなど、いろんな活動をしました。「フットパス」や「農家のお手伝い」を通じて、地域の魅力を住民自身が再認識したり、経済的なメリットが生まれたりしたことも、多くの人々の理解と参加につながったと思います。(杉田さん)

図

3助成終了後の活動

若い世代や海外からの観光客をひきこみ、より多くの人と交流を深めていく

五ヶ瀬自然学校の活動は、今後どのように広がっていくのでしょうか。「フットパスは、集落の人しか知らない道を歩けたり、昔そこにあった暮らしを聞くことができたりするのが面白いポイントです。地域の魅力を再発見でき、地域活性化にもつながるので、もっと全国で流行らせたいと思っています。高千穂郷・椎葉山地域をモデルに、都市と山村を結ぶ活動が広がり、日本全体が元気になるといいですね。また、都市からの観光客に加え、海外からの観光客を増やしていきたいです。」(杉田さん) 海外からの観光客へ向けた日本の農村を体験できるプログラムの提供と、高千穂郷・椎葉山地域の魅力を世界に発信するための英語や動画での情報発信の仕組みづくりも進んでいます。
 ただ、五ヶ瀬町では、若い世代の参加がまだまだ少ないことが課題です。現在、岩谷さんを中心として、大学と連携したスタディツアーや村留学、ゲストハウスやキャンプ施設の増設など、若い世代に向けた活動に意欲的に取り組んでいます。
 「岩谷さんは、何をしても楽しい!と言ってくれます。地元のおじいちゃんやおばあちゃんとのパイプ役として言いづらいことも言ってくれるし、プロジェクトに欠かせない人材です。このような若者をさらに呼び込みたいと思っています。」(杉田さん)
 地域の人と世界農業遺産の地の魅力をさらに磨き上げ、若い力とともに日本全国、そして世界の人との交流をさらに深めていきます。

図
世界農業遺産の地を象徴する鳥の巣棚田
地球環境基金から
農村の高齢化、耕作放棄地の増加、伝統文化・農業の継承、生物多様性の保全、地域経済の振興など、農村が抱える多様な課題に対し、地域住民とともに試行錯誤を行った点が評価できます。結果的にSDGsの達成にも寄与しており、同様の課題を抱える地域のモデルにもなり得ると思います。今後、若い世代の関係人口をより増やしていき、持続可能な農村・進化した農村の実現にも期待したいです。

地球環境基金 Japan Fund for Global Environment

〒212-8554 神奈川県川崎市幸区大宮町1310番 ミューザ川崎セントラルタワー
独立行政法人環境再生保全機構 地球環境基金部
TEL:044-520-9505 FAX:044-520-2192

独立行政法人環境再生保全機構 ERCA

Copyright, Environmental Restoration and Conservation Agency. All rights Reserved.

ページトップ