成人ぜん息の基礎知識 健康な人と変わらない日常生活を送れるようになること

あなたがいま困っているのは、どんなことですか?

長年治療しているのに、なかなかよくならない方へ

ぜん息治療の目標は、発作などの症状がなく「健康な人と変わらない生活を送ること」です。長年治療しているのになかなかよくならない場合、まずはどこに原因があるのか自分の治療への取り組みを振り返ってみましょう。

ここがポイント!

  • ぜん息は適切な治療と自己管理をすることで、最小限の薬物治療で、健康な人と変わらない生活が送れる病気です。
  • ただ単に薬の量や種類を増やしてもらうのではなく、自分で治療への取り組みを見直すことも重要です。
  • 専門医を受診したことがない人は、一度、呼吸器やアレルギーの専門医を受診してみましょう。
  • 近年、重症ぜん息患者さんの治療の選択肢が増えています。

ぜん息をコントロールできているか振り返ってみましょう

ぜん息の症状が出ないよう、適切な薬物療法と自己管理を継続することを「ぜん息をコントロールする」といい、症状がまったく出ない状態を「コントロール良好」といいます。
多くの患者さんは、自分の一番苦しかったときを基準に今の状態を評価するため、症状があるにもかかわらず、“あのときよりはよい状態にある”と思ってしまいがちです。しかし、「コントロール良好」とは、以下のような状態を指します。

ぜん息のコントロール状態の評価

    • ぜん息症状
      (日中および夜間)
    • 発作治療薬の使用
    • 運動を含む活動制限
    • 呼吸機能
      (FEV1注1およびPEF注2
    • PEFの日(週)内変動
    • 増悪(予定外受診、救急受診、入院)
  • コントロール良好
    (すべての項目が該当)
    ぜん息症状
    (日中および夜間)
    なし
    発作治療薬の使用
    なし
    運動を含む活動制限
    なし
    呼吸機能
    (FEV1注1およびPEF注2
    予測値あるいは自己最良値の80%以上
    PEFの日(週)内変動
    20%未満注3
    増悪(予定外受診、救急受診、入院)
    なし
  • コントロール不十分
    (いずれかの項目が該当)
    ぜん息症状
    (日中および夜間)
    週1回以上
    発作治療薬の使用
    週1回以上
    運動を含む活動制限
    あり
    呼吸機能
    (FEV1注1およびPEF注2
    予測値あるいは自己最良値の80%未満
    PEFの日(週)内変動
    20%以上
    増悪(予定外受診、救急受診、入院)
    年に1回以上
  • コントロール不良
    コントロール不十分の項目が3つ以上当てはまる
    増悪(予定外受診、救急受診、入院)
    月に1回以上注4
  1. (喘息予防・管理ガイドライン2018)
  1. 注1:呼吸機能検査でわかる「1秒量」のこと。
  2. 注2:ピークフロー値。
  3. 注3:1日2回測定による日内変動の正常上限は8%である。
  4. 注4:増悪が月に1回以上あればほかの項目が該当しなくてもコントロール不良と評価する。

あなたは、ぜん息をうまくコントロールできていますか? まずは、いまのコントロール状態を調べてみましょう。

チェックテストの結果、コントロール不十分・不良の場合は、薬の吸入や服薬をきちんと継続しているか、自己管理を怠っていないか確認する必要があります。以下の①~④の順に自分の行動を振り返り、できていない取り組みを改善していきましょう。

1.医師の指示通りに、薬の吸入や服薬を続けていますか
ぜん息は慢性の病気です。自分勝手に薬を止めてしまわずに継続することが重要です。
2.吸入薬を正しく吸入できていますか
吸入薬は、正しい手順で吸入することによって、はじめて本来の効果を発揮します。自己流になっていないか、きちんと薬を吸入できているか、定期的に医師や看護師、薬剤師にチェックしてもらいましょう。

正しい吸入方法を身につけよう

3.ぜん息の悪化因子への対策をしていますか
ぜん息を悪化させる原因は人によってさまざまです。自分に合わせた悪化因子への対策をしましょう。
4.合併症がある場合、きちんと治療をしていますか
ぜん息と合併することにより、ぜん息に悪影響を及ぼす病気があります。治療を継続してもなかなかよくならない場合、合併症がないか医師に診断してもらうことも大切です。合併症がある場合には、きちんと治療を受けましょう。

ぜん息との合併に気をつけたい病気

治療のステップアップを検討してもらう

自己管理の仕方、治療への取り組みを改善しても、ぜん息がよくならない場合、治療薬の種類や量、そのものが足りていない可能性があります。自分の治療への取り組み方、薬の使い方、自己管理の方法を医師に伝えたうえで、医師に薬の量や種類を増やす(治療をステップアップする)ことを検討してもらいましょう。

専門医を受診する

これまでに一度も呼吸器やアレルギーの専門医を受診したことがない、という方は、一度、呼吸器やアレルギーの専門医を受診してみましょう。かかりつけ医では気づかなかったぜん息を悪化させる要因や、薬の見直しなどをしてもらえる可能性があります。

専門医は、各学会のホームページなどで検索することができます(外部サイトへ移動します)

重症ぜん息の治療

吸入方法や自己管理の仕方などを見直しても症状が改善せず、高用量の吸入ステロイド薬や複数の薬剤を併用しても症状が安定しない場合は、「重症ぜん息(難治性ぜん息)」と位置付けられます。
近年、重症患者さんを対象とした新しい治療法が登場し、治療の選択肢が広がっています。

抗IgE抗体(オマリズマブ製剤 商品名:ゾレア®)

IgE抗体がマスト細胞にくっつくのをブロックしアレルギー反応を食い止めることで、ぜん息の症状を改善し発作を減らす、注射による治療法です。

抗IL-5抗体(メポリズマブ製剤 商品名:ヌーカラ®)

ぜん息を重症化させるひとつの要因である「好酸球」を活性化させるIL-5(インターロイキン-ファイブ)という物質の働きを抑えて、ぜん息の症状を改善し発作を減らす、注射による治療法です。

抗IL-5受容体抗体(ベンラリズマブ製剤 商品名:ファセンラ®)

好酸球を活性化させるIL-5が、好酸球の表面にあるIL-5受容体にくっつくのを妨げる薬です。ADCC活性(抗体依存性細胞傷害)により、好酸球を直接除去し、ぜん息の症状を改善させる、注射による治療法です。

気管支サーモプラスティ(BT:Bronchial thermoplasty)

気管支の中に内視鏡を入れ、気管支の内側を65度に温め、気管支を広げることで、ぜん息の症状を改善させる手術による治療法です。対象は、18歳以上の重症ぜん息患者さんです。

いずれの治療法も、医療費が高額になるため、医療費控除や高額療養費制度などの利用を考える必要があります。また、新しい治療法であるため、治療をする期間や、長期の有効性、安全性に関してはまだデータが不十分です。医師とよく相談して治療に臨みましょう。

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