ピークフロー値を1日2回(朝・晩)測定して折れ線グラフにしていくことで、熱が出た場合の体温測定と同様に、発作の状況を数値で客観的に知ることができ、発作の予防に非常に役立ちます。医師にとっても、重症度を正確に判定し、病状に合った的確な治療をしたり、治療効果をみて治療方針を検討したりする際にも、大きな情報となります。ぜん息日記には、いろいろ種類がありますが、基本的には、発作の状態、症状、日常生活の状況、薬の使用状況、ピークフロー値、天候、気づいた点などについて記入していくようになっています。できる限りぜん息日記を記入し、受診の際には忘れずに持っていくようにしましょう。
どんなときに発作が起こったのか、そのときいつもと違うことはなかったか、薬は忘れずに使用していたのかなどをぜん息日記に記録しておくと、ぜん息発作の原因をつかめるようになります。決まった時間にピークフローを測定して記録することで、いつもと違うことに気づくこともできますので、習慣づけるとよいでしょう。また、主治医の先生ともう一度治療法について話し合うことが大切です。
とくに新しい環境に変わるときには、生活の流れや1日の時間配分が変わり、住まいや仕事場など今までとは違った環境に身を置くことになり、ストレスで体調の変化が起こることもまれではありません。症状が軽快していたと思っていても発作につながることが多くあります。長期管理薬による治療を忘れずに続けることをおすすめします。
最近では、オフィスでの禁煙・分煙が一般的になってきましたが、社会に出ると受動喫煙にとくに注意が必要になります。本人がたばこを吸わなくても、まわりの人が吸っているたばこの煙で発作が起こったり、発作が起こらなかったとしても、呼吸機能を低下させることがわかっていますので注意しましょう。
日本人には、体内でアルコールを分解する際に発生する毒物・アセトアルデヒドを分解する酵素が欠損していたり、不完全な人が多いといわれています。このような人が飲酒をすると、アセトアルデヒドによって顔や全身が紅潮したり、動悸がしたりします。同様に気管支の粘膜もむくむため、ぜん息の症状が悪化することがあります。また、アセトアルデヒドにはマスト細胞などからヒスタミンを遊離させる働きもあるため、これによってもぜん息症状が悪化します。さらに、赤ワインなどに含まれる防腐剤によって気管支が収縮し、悪化することもあります。
いちばんの対処法はアルコールが含まれるものを飲食しないことですが、仕事のうえで乾杯程度のお付き合いをせざるを得ないこともあるでしょう。そのような場合は、医師に相談してください。
長期管理薬によるぜん息のコントロールが十分にできていれば、少量の飲酒では症状が出にくくなる可能性があり安心です。日ごろから、ぜん息のコントロール管理を忘れずに行い、無理な飲酒はしないようにしましょう。
成人ぜん息の治療目標は、「健康な人と変わらない生活を送ること」です。ぜん息だからといって運動できないわけではありません。呼吸機能や気道過敏性の改善、治療薬の減少、肥満の解消によるぜん息の改善など、運動することはぜん息にとってさまざまな利点をもたらします。
ただし、運動により一時的にぜん鳴や呼吸困難が起こる「運動誘発ぜん息」に注意しましょう。運動誘発ぜん息が出現するのであれば、まずは長期管理薬を見直して、ぜん息のコントロールをよくすることがもっとも大切です。次に重要なのが運動前の薬物治療と、ウォーミングアップによる予防です。運動15分前の短時間作用性β2刺激薬の吸入が効果的といわれています。直前のインタール®の吸入、ロイコトリエン受容体拮抗薬の服用の効果も報告されています。また、ウォーミングアップ時に軽く発作を起こすと、その後「不応期」とよばれる運動誘発ぜん息が起こりにくい状態が数時間続くため、症状を気にせずに運動することができます。
一般に水泳はぜん息発作を誘発しにくく、冬季のマラソンなどは運動誘発ぜん息を起こりやすくするといわれます。しかし、多くのスポーツ選手がぜん息を克服して活躍しています。治療をきちんと継続し、運動を楽しみましょう。
猫や犬、ハムスター、ウサギなど毛のある動物は、アレルゲン(アレルギーの原因)となって、ぜん息発作を引き起こす要因になることがあります。まずは、飼いたい動物が自分にとってのアレルゲンであるかどうか、病院で血液検査を受けて調べましょう。血液検査で数値が高ければ、その動物に注意する必要がありますが、それだけでなく、その動物と触れ合ったときに実際に症状が現れるのかを確認することも大切です。
自分にとってはアレルゲンであり、その動物と触れ合ったり、近くにいるだけで症状が出てしまうという場合は、飼わないか、屋外で飼育し毛を家の中に持ち込まないなどの配慮が必要になります。
動物がアレルゲンであっても症状が出ない、アレルゲンでない場合はそれほど問題になりませんが、動物のアレルゲンは低分子で非常に軽いため、掃除だけでは室内から取り除くことが難しく、飼っている部屋だけでなく、家中に広がってしまいます。今は症状が出なくても、将来的にぜん息発作の原因になるおそれもあります。情操教育としてペットの有用性がいわれるところですが、飼い始めてしまってからペットを手放すのは簡単なことではありません。金魚や亀など、毛のない動物をペットにすることは問題ないことも多く、心の問題などとも関連するため、主治医の先生とよく相談して決めましょう。
ダニやカビがアレルゲンであることが明らかな場合、ぜん息の悪化を防止するためのダニ対策やカビ対策をやったほうがいいのは確かです。自分に必要な対策をするために、自分のアレルゲンがわからない場合は、まず病院で血液検査を受け、自分のアレルゲンを明らかにしておきましょう。
そのうえで、自分のアレルゲンに合わせた対策を行います。環境整備でもっとも大切なことは、継続することです。そのためにはまず、処方されているぜん息の薬をきちんと使ったうえで、ふだんどおりの掃除をして、症状が出るかどうか確認してみましょう。症状が出ないのであれば、今の掃除の仕方で大丈夫、ということになります。
ダニアレルギーで目に見えないダニが気になる場合は、市販の「簡易式ダニ検査キット」を使ってみるのもいいでしょう。ダニの量が視覚化でき、どこを中心に掃除すればいいのか、見当がつけやすくなります。「簡易式ダニ検査キット」は薬局やインターネットで購入することができます。