実践編ぜん息をコントロールする
悪化因子の対策
室内環境を見直しましょう
ぜん息の原因がダニ、ハウスダスト、カビ、ペットなど家の中のアレルゲンであることがわかっている場合は、室内の環境整備がとても重要です。
ここがポイント!
- 無理のない対策を継続するために、自分のアレルゲンを知ることがとても大切です。主治医に相談し、まず血液検査で調べましょう。
- 自分のアレルゲンに応じた対策をとりましょう。
まずは、自分のアレルゲンを把握する
ぜん息治療のためには、薬物療法に加えて身の回りのアレルゲン(アレルギーの原因)を減らすために掃除などの「環境整備」が大切です。
しかし、ぜん息発作の原因は人によってさまざまであり、アレルゲンも人によって異なります。そのため、全員が一律にすべての対策をとる必要はありません。とくに成人ぜん息の場合、アレルゲンが関与していない「非アトピー型ぜん息」の患者さんも多くいます。まずは、病院で血液検査(抗原特異的IgE抗体検査)を受けて自分のアレルゲンが何か明らかにしましょう。
環境整備をする前に、自分にとってのアレルゲンは何かを知ることで、負担が少なく効率のよい対策をとることができるようになります。
ぜん息の原因となりやすいアレルゲン
- グループ
- アレルゲン名
- 陽性の場合は…
- 備考
- ダニ
-
- アレルゲン名
- コナヒョウヒダニ(もしくはヤケヒョウヒダニ)
-
- 陽性の場合は…
- ダニ対策
-
- 備考
-
- コナヒョウヒダニとヤケヒョウヒダニは、ぜん息の原因アレルゲンの代表格です。
- 家の中のホコリやハウスダストの中に潜んでいます。
- 2つのダニはアレルゲン物質が似ているため、どちらか一方の検査を行えば問題ありません。
- カビ
-
- アレルゲン名
- アスペルギルス(アスペルギルス・フミガタス)
- アルテルナリア
- カンジダ
-
- 陽性の場合は…
- カビ対策
-
- 備考
-
- アスペルギルス、アルテルナリアは、ぜん息重症化との関係が明らかになっているため、優先して調べたほうがよいでしょう。
- アスペルギルスのアレルギーをもっている方は、アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)を発症している可能性があるため、胸部レントゲン、CTを受けることが望まれます。
- 昆虫
-
- アレルゲン名
- ガ、
チャタテムシ(検査はガで代用)など
-
- 陽性の場合は…
- ダニ対策
カビ対策
-
- 備考
-
- ホコリの中に生息し、湿気を好むことから、対策はダニ・カビ対策と共通になります。
- 近年は、チャタテムシが昆虫アレルゲンとして注目されています。検査方法が確立していないため、ガで代用します。
- ペット
-
- アレルゲン名
- ネコ皮膚
- イヌ皮膚
-
- 陽性の場合は…
- ペット対策
-
- 備考
-
- とくに原因として多いのは、ネコ、イヌです。
- ペットを飼っていなくても原因になることがあります。
- 花粉
-
- アレルゲン名
-
- 春
-
- スギ・ヒノキ
- ハンノキ
(もしくはシラカンバなどカバノキ科花粉)
-
- 初夏
- カモガヤ
(もしくはオオアワガエリなどイネ科花粉)
-
- 秋
- ブタクサ
ヨモギ
-
- 陽性の場合は…
- 花粉対策
-
- 備考
-
- 花粉は、季節性アレルゲンの代表格です。
- 「過去と現在の居住地域や周囲環境」と「症状が出やすい季節」が影響するため、血液検査の際は注意が必要です。
- 基本的に同じ科(グループ)に属する花粉のうち、一つのアレルギーを調べればよいでしょう。
室内の環境整備
主な環境アレルゲンは、ダニ、カビ、ペットです。アレルゲンを取り除くには、屋内の対策がメインになります。
ダニ対策:ホコリをためないこと
ダニはホコリやヒトのフケなどをえさとして繁殖するため、室内のホコリをためない対策や寝室・寝具の対策が中心となります。また、ダニは湿気の高い場所も好むため、湿気対策も併せて行います。
- 換気は十分に行う。気密性の高いマンションではとくに心がける
- 浴室・台所は湿気が多いため、十分な換気を心がける
- こまめにていねいに掃除すること
- カーペットは取り除く。湿気がこもるので畳の上に敷くのも厳禁
- 畳の部屋はフローリングにするのがベスト
- ダニ殺虫剤の効果は確認されていないため、積極的に使用しなくてよい
- エアコンは一般的には年2回、さらに使用開始直前に掃除し、その後は毎週掃除する
- 観葉植物は、湿度上昇の原因となるのでベランダに置くなどする
- 水槽は室内に置かない
- 極端な乾燥状態のときを除いて洗濯物の部屋干しはやめる
- 押入れは定期的に空気を入れ替え、スノコを敷く
- 加湿器は使わない
- カーテンは洗濯しやすい薄手のもの、またはブラインドに替える
- かさのある照明の場合、こまめに掃除して、ホコリを取り除く。天井据付型の照明にするのがベスト
- 布製のソファは、革製やビニール製に替える
- ぬいぐるみは、よく洗濯する。できれば置かない
寝室・寝具

- 寝具はよく干し、その後掃除機をていねいにかける
- できればすべての寝具を専用の防ダニシーツで覆う。丸洗いできる寝具(週1回洗濯)もよい。同室者の寝具も同様に
- 枕はパイプ枕がよい。カバーも変える
- ベッドや布団の高さを床から30cm以上離す
- 布団の上げ下ろしの後の2時間は、部屋を十分に換気する
- マンションの北側の部屋を寝室にしない
カビ対策:ダニ対策+湿度を上げないこと
ほとんどの場合、ダニアレルギーも併発するので、まずダニ対策を行います。そのうえで、こまめな換気をはじめとする湿度対策がとくに重要です。
- 換気は十分に行う。気密性の高いマンションではとくに心がける
- 浴室・台所は湿気が多いため、十分な換気を心がける
- エアコンは一般的には年2回、さらに使用開始直前に掃除し、その後は毎週掃除する。フィルターなどに付着したカビ胞子の飛散を防ぐため、カビがアレルゲンの場合は、できるだけ使用しない
- 観葉植物は湿度上昇の原因となるのでベランダに置くなどする
- 水槽は室内に置かない
- 極端な乾燥状態のときを除いて洗濯物の部屋干しはやめる
- 押入れは定期的に空気を入れ替え、スノコを敷く
- 加湿器は厳禁!
カビが発生したら
目に見えるカビが壁や床などに発生した場合は十分に清掃(できれば専門の業者に依頼)するか、できれば転居を検討する。
転居先を選ぶポイント
- 南や東向きで日当たりがよい木造家屋か、同じ条件の窓の多いマンションの2階以上が望ましい
- 新築のコンクリート住宅やマンションは、湿度が高いので注意
自宅以外では……
- 湿度が高く換気の悪いところには、なるべく行かない
- とくに長雨や、雷雨の後は屋外でも注意が必要。風通しのよい環境に身を置くなどする
ペット対策:ダニ対策+飼わないことが大前提

- ほとんどの場合、ダニアレルギーも併発するので、まずダニ対策を講じる
- ペットを飼わないことが大原則。どうしても飼うのなら室外が原則
- 小さなペットのほうがアレルギー症状が出やすい。たとえばネコに反応する方はハムスターも不可
- ネコアレルギーは、自分がネコを飼った経験がなくても、公共の場や友人から感作されることが多いので、周囲の環境にも注意する
- どうしても飼育を続けるときは、以下の対策を講じる
- ※1~2週間に1回、ペットを洗う
- ※ペットを寝室には入れない
- ※空気清浄機を寝室の枕元に置く
- ※吸入ステロイド薬に加えロイコトリエン受容体拮抗薬などの長期管理薬を併用または増量する
- ※免疫療法など体質改善を図る
- 喫煙と重なるとぜん息が非常に悪化しやすいので、禁煙が大原則(受動喫煙も不可)
- 室内の掃除と換気を十分に行う
- 友人や親類などでペットを飼っている家庭に行くときは十分注意する。できれば室内に入らない
- 別の階の部屋も換気や掃除を十分に行う
- ペットの飼育もやめてアレルギー症状がでなくなっても、過敏な体質は続くため、再度の飼育は厳禁
- 新築以外の家屋に転居するときは、転居予定の家屋で過去にペットが飼われていたかを確認してから決定する
環境整備のポイントは、継続
これらの対策は、短期間ではなく継続して行うことが大切です。そのためにも、無理のない効率のよい対策をすることが必要になります。熱心に掃除をすることは悪いことではありませんが、負担に感じ、やらなくなってしまっては意味がありません。
肩の力を抜いて、ふだんどおりの掃除をして症状が出るかどうか確認しましょう。症状が出ないのであれば、今の掃除の仕方で大丈夫ということになります。
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