成人ぜん息の基礎知識 健康な人と変わらない日常生活を送れるようになること

あなたがいま困っているのは、どんなことですか?

はじめてぜん息と診断された方へ

ぜん息は、アレルギーなどが原因となって気道に慢性的な炎症が起こり、せきやたん、ぜん息発作などの症状が起こる病気です。成人になってからのぜん息は、完治させることが難しい病気だといわれていますが、適切な薬物治療と自己管理を継続することで、仕事への影響もなく、健康な人と変わらない生活を送ることができるようになっています。あきらめずに継続して治療に取り組みましょう。

ここがポイント!

  • 治療をせずに放っておくとぜん息は悪化しますが、適切な治療と自己管理でこれまでと変わらない生活を送ることができます。
  • ぜん息治療の基本は、気道の炎症を抑えるための「吸入ステロイド薬」です。
  • 薬物治療とあわせ、ぜん息の悪化要因への対策も必要です。

ぜん息を放置するとぜん息死を招くことも

ぜん息の人の気道は、慢性的に炎症を起こしています。そのため、少しの刺激でも気道が過敏に反応し、せきやたんの症状や、呼吸困難をともなうぜん息発作(気道の狭窄:気道がせまくなる状態)が起こります。ぜん息治療でもっとも大切なのは、ぜん息発作を起こさないよう、気道の炎症を抑えておくことです。
昔に比べ数は減りましたが、現在でも年間約1,450人の人がぜん息が原因で亡くなっています。ぜん息と診断されたら、放置せずに適切な治療と自己管理で、気道の炎症を抑え、ぜん息をコントロールしましょう。

成人ぜん息の特徴

非アトピー型が多い

小児ぜん息では9割以上にアレルギーの関与が認められますが(アトピー型ぜん息)、成人ぜん息では、アレルゲンを発見できるのは6割程度。残りの4割はアレルゲンを発見できない「非アトピー型ぜん息」です。

成人になってから初めて発症するケースが多い

小児ぜん息の持ち越しや、小児ぜん息がいったん治癒または寛解(長期間、無症状で無治療の状態)した後、大人になって再び発症することもありますが、小児期にぜん息がなかった方でも、大人になってから(とくに中年以降)発症することもあります。

なかなかよくならない

ぜん息は、高血圧症や糖尿病と同じように慢性疾患(長期にわたって付き合っていく必要がある病気)です。とくに成人ぜん息は、非アトピー型が多いことやぜん息悪化の要因が小児よりも多いため、ほぼ治らないといわれています。また、気管支の「リモデリング」が起こりやすいことも大きな要因です。

リモデリング

ぜん息治療の中断や放置などで炎症が長期に続くことで気道の線維化が進んで硬くなり、気道がせまい状態のまま、もとに戻らなくなること。治療しても治りにくくなったり、重症化を招いたりする要因です。 炎症が続くことにより、気道壁や基底膜が肥厚、平滑筋が肥大し、気道がせまい状態のまま戻らなくなります

ぜん息の治療法

ぜん息の症状は気道の炎症が原因で起こります。気道の炎症を抑え、発作を予防するのが「長期管理薬」です。長期管理薬のひとつである「吸入ステロイド薬」が普及してから、ぜん息で亡くなる人や入院する人の数が大幅に減少しました。
あわせて、発作が起きたときには「発作治療薬」を使用します。

  • 症状がなくても毎日使用
    長期管理薬(コントローラー)
    気道の炎症を抑える薬と、気道を広げる薬で発作を予防します。
    • 長期間使ってはじめて本当の効果が現れる薬です。
    • 症状がないからと途中でやめず医師の指示どおりに続けること!
    炎症を改善
    気道の炎症を抑える薬
    吸入ステロイド薬
    抗アレルギー薬(ロイコトリエン受容体拮抗薬など)
    症状を改善
    気道を広げる薬
    長時間作用性β2刺激薬(吸入、経口、貼付)
    テオフィリン徐放製剤
    長時間作用性抗コリン薬
  • プラス記号
  • 発作が起きたときだけ使用
    発作治療薬(リリーバー)
    発作時に気管支を速やかに広げ、呼吸を楽にします。
    • 気道の炎症を抑える働きはありません! 発作治療薬だけに頼っていると、ぜん息が悪化します!
    発作を改善
    気道を広げる薬
    短時間作用性吸入β2刺激薬
    テオフィリン薬
    抗コリン薬

ぜん息治療薬は主に、吸うことで薬を気道に直接届ける「吸入薬」が基本です。正しい吸入方法をマスターしておくことが重要です。

悪化要因を取り除く自己管理も重要です

ぜん息患者さんの気道は、炎症によって刺激に敏感になっているため、さまざまな要因がぜん息発作や悪化を招きます。とくに、カゼやインフルエンザなどの呼吸器感染症、喫煙は、成人ぜん息を悪化させる要因です。また、室内のダニやカビがアレルゲンである場合には、掃除などの環境整備が必要です。

ぜん息のことを相談したい、勉強したいときには

お住まいの地方公共団体や患者会、学会などがぜん息等のアレルギー疾患に関する講演会や啓発イベントを行っています。興味がある方は参加してみましょう。
環境再生保全機構のホームページ「ぜん息・COPDのプラットフォーム」ページでは、さまざまなイベントをご紹介しています。ぜひご覧ください。

ぜん息に関する情報収集ができるサイト

科学的根拠に基づいた確かな医療情報を発信しているウェブサイトなどを活用して、積極的に情報収集していきましょう。

環境再生保全機構(ERCA:エルカ)が行っている事業

環境再生保全機構(ERCA:エルカ)では、ぜん息に関するパンフレットや自己管理に使うツールなどの無料配布や、電話・メール相談室などを開設しています。ぜひ、ご活用ください。

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