成人ぜん息の基礎知識 健康な人と変わらない日常生活を送れるようになること

成人ぜん息Q&A

~治療について~

ぜん息の発作が起きなくなったので、薬をやめたいのですが……。

目に見えない気道の中の炎症は続いています。勝手に薬を中止することは絶対にやめましょう。

ぜん息の発作が起きなくなったのは、ご自身の環境コントロール、生活コントロールが上手になったことに加え、長期管理薬によるコントロールができているからです。もしかしたら、長期管理薬を不定期にしか使用していないけれど、発作が起きないから薬をやめたいと思われているのかもしれませんが、ぜん息は再燃・再発を繰り返す慢性の病気であることを忘れないでください。症状がなくても、気道の中では炎症が続いているため、炎症を抑える長期管理薬を毎日続けることが必要です。また、軽い発作が起きているのに気づかず、気道が狭くなったまま戻らなくなる「リモデリング」が進むおそれもあります。長期管理薬を続けることで、リモデリングの進行も予防することができます。
必ず医師の指示どおりに服用し、自分の判断で薬を中止することは絶対にやめましょう。

ぜん息の治療は、重症度に応じた治療ステップより開始し、コントロールが得られたら治療をステップダウンしていきますが、ぜん息の症状が改善し安定しても、少なくとも3か月は様子をみる必要があります。あなたの発作はいつ起こりやすいですか? 春や秋、カゼをひいたとき、いまの治療を開始してから、その時期は発作なく過ごせましたか? 繰り返しの発作が出現しないことが大事なことです。

医師は環境整備やわずかな症状の変化とともに、「ぜん息日記」やピークフローなどを参考に、ぜん息のコントロール状況を把握したうえで、薬の減量や中止の指示をします。

ぜん息の治療中に治療のステップアップ、ステップダウンということを聞いたのですがくわしく教えてください。

薬の量や種類を減らすことを「ステップダウン」、増やすことを「ステップアップ」といいます。医師が患者さんの状態を総合的に判断して、決定します。

ぜん息の治療を行う場合、患者さんの重症度を判定して治療方針(治療薬の種類や使用量)を決定します。ぜん息の重症度は、ぜん息の症状がある期間にどの程度の強さで何回起こったか、夜間の症状を含めた症状の強度や発生頻度に応じて判定されます。ぜん息の重症度は、ステップ1(軽症間欠型)からステップ4(重症持続型)の4段階に分類され、推奨される治療方針がガイドラインで具体的に示されています。医師はこれを参考に、患者さんの治療薬の種類と使用量を決定し、ぜん息症状の改善と安定を図るわけです。

ぜん息治療の基本となる考え方は、「発作が起きたら治療する」のではなく「発作を起こさないようにコントロールする」ことです。したがって、ぜん息症状がなくなったら治療をやめるのではなく、ぜん息症状を予防する長期管理が標準的な治療プランとなっています。長期管理がうまくいくと、ぜん息症状のない生活を送ることができます。しかし、これはぜん息が治ったからではなくうまくコントロールされていることを意味します。患者さんはできれば治療薬を少なくしたいと感じていますし、医師も必要最低限の治療薬でコントロールしたいという気持ちは同じです。現在の治療薬で少なくとも3か月以上無症状であれば、治療薬の使用量をワンステップ下げる「ステップダウン」を行います。逆に、現在の治療薬を指示どおり使っているのにもかかわらずぜん息症状が続くため、短時間作用性吸入β2刺激薬(発作治療薬)を1日に3~4回以上使用する日が週に3回あるような場合は、ぜん息のコントロールが十分とはいえません。医師に報告し、治療方針をワンステップ「ステップアップ」し長期管理薬の使用量を変更します。

じれったく感じるかもしれませんが、医師はぜん息治療のもう一つの目標として「気道のリモデリングの予防」ということを考えています。ぜん息発作を繰り返し、本来弾力性のある気道が傷ついて気道壁が厚くせまい状態になる(気道のリモデリング)と、効果のあるはずの治療薬が効かなくなってしまいます。自己判断で治療を中断し、発作を繰り返すと気道のリモデリングが進んで重症化してしまうのです。

ぜん息治療の「ステップアップ・ステップダウン」の判断には、ぜん息日記でのピークフロー値の変動も参考となります。ぜん息症状のない快適な生活を送るためには、自己判断による治療の中断は禁物です。医師には正直に自分の症状や治療の状況(実は吸入薬をさぼってしまった、どうしても服薬するのを忘れてしまう、など)を主治医の先生に伝え、よいパートナーシップを築いて、二人三脚でぜん息治療を行うことが大切です。

夜中や早朝によく発作が起きますが、薬の吸入・服用時間と関係ありますか。

吸入・服用時間の関係というより、長期管理自体が十分にできていない状況にあると考えられます。

ぜん息患者さんでは、深夜から早朝にかけてモーニングディップと呼ばれる呼吸機能の低下が認められます。そのため、気管支ぜん息の症状である発作性の呼吸困難やぜん鳴などは、夜間・ 早朝に多く出現します。しかし、夜間や早朝に症状が出るということは病状が不安定であることを示しており、これは吸入・服用時間の関係というより、長期管理薬の服薬や、自己管理が十分にできていない状況にあると考えられます。

発作が起こると、発作治療薬を使用されると思います。もちろん発作治療薬は発作をしずめるためにあるのですが、発作治療薬を使用しなければいけない状況となる「発作」が出ている、ということを認識してください。もしまだ吸入ステロイド薬などの長期管理薬を使用していないのであれば、ぜひとも病状を安定させるために、長期管理薬である吸入ステロイド薬の使用を始めてください。すでに長期管理薬を使用していても発作が起こるという場合は、病状が不安定になってきている証拠です。医師に夜間・早朝に発作が出てきていることを告げ、種々の長期管理薬の併用、あるいは吸入ステロイド薬の増量などについて相談し、対処してください。

ステロイド薬の副作用が心配です。

吸入ステロイド薬は、副作用がほとんど出ないよう工夫されています。ただし、吸入後のうがいは忘れずに。

ステロイド薬の正式名称は、「副腎皮質ステロイド薬」といい、その名のとおり、もともとは人体にある副腎という臓器から少量分泌されているホルモンです。炎症を抑えるうえでもっとも強力な作用を持ち、正しく使えばとてもよい薬で、約70年前から使用されています。しかし、このステロイド薬を経口や注射などによる投与法(全身投与といいます)で長期間使用すると、さまざまな副作用(高血圧、糖尿病、骨粗しょう症、胃潰瘍、感染症など)が生じることがあります。

この副作用のリスクを減らす工夫を施された薬が、現在のぜん息治療の中心となっている「吸入ステロイド薬」です。毎日継続して長期間使用することを考え、少ない量を、吸入という方法で気道に直接届けることで、重い副作用がかなり抑えられるようになっています。

この吸入ステロイド薬の普及によって、ぜん息死やぜん息発作による入院は減少しました。吸入ステロイド薬の副作用としては、口の中に残ると粘膜の免疫を抑制してしまい、カンジダというカビの一種が増えることがあります。
それを防ぐために、吸入後には必ずうがいをしてください。「ガラガラ」うがいが難しい場合は、「ブクブク」して飲み込んでしまっても効果はあります。食事の前に吸入をして、食後に歯みがき、うがいなどの口腔ケアを心がけるのもよい方法です。
それでも、患者さんによっては、声がれなどが出ることもあります。その場合も、吸入ステロイド薬の使用をあきらめるのではなく、薬剤の種類を変えることによって対処できる場合が多くあります。

いつまで薬を続けなければならないのでしょうか。

患者さんの状態を総合的にみて、医師の判断で薬の減量や中止をします。

ぜん息は、気道の炎症が原因で、せきやたんなどの症状が起こります。そのため、治療の中心となるのは「気道の炎症を抑える」長期管理薬、主に「吸入ステロイド薬」です。

長期管理薬をいつ中止するかについては、明確な基準が存在していません。個々の患者さんの年齢、ぜん息の重症度(症状の程度と頻度、治療内容を加味したもの)、今までの入院歴や発作歴、全身性ステロイド薬の使用も含めた治療歴、症状の季節性変動や運動によるぜん息症状の誘発など、各患者さん固有の悪化因子を十分検討したうえで考えるべきだからです。

一般に成人ぜん息の場合、コントロール良好な状態が3~6か月以上保てれば、薬の減量(ステップダウン)を考慮します。さらに、必要最少量の薬で良好状態が続けば、中止を試みることがあります。
この際、ピークフロー測定、呼吸機能検査および呼気一酸化窒素検査(呼気NO検査)、可能であれば気道過敏性検査などで、気道の炎症が本当におさまっているかを客観的に評価したうえで、中止するのが望ましい方法です。

注意したいのは、薬を減らしたり、中止できたりしたとしても、何かの拍子で症状が再び出る(再燃する)こともある点です。とくにカゼなど呼吸器の感染症により、その危険性が高まります。発作が起こりやすい季節は、薬を継続するのもひとつの方法です。

再燃予防のためダニ、カビ、ペット、たばこ対策などの環境整備、たんれんの継続、再燃時の早期の対処法などを知っておきましょう。また、薬を中止した後も、定期的な肺機能検査等を受けることをお勧めします。

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