ぜん息の特徴的な症状は、夜間から早朝にかけてせきやたんが出やすい、呼吸をすると「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音(ぜん鳴)が聞こえることです。ぜん息と同様に、せきやたん、呼吸困難をともなう病気はほかにもあり、治療法が異なるため鑑別が必要になります。
カゼを引いた後などに乾いたせきが8週間以上長引く場合、「せきぜん息」が疑われます。ぜん息の一種ですが、ぜん息の症状として特徴的な「ゼーゼー」「ヒューヒュー」というぜん鳴や呼吸困難はありません。また、呼吸機能はほぼ正常なことが多いといわれています。
ぜん息と同様に、気道感染や冷気、運動、受動喫煙を含む喫煙、天気や気温の変化、花粉や黄砂などで症状が悪化します。通常のカゼ薬やせき止め薬では効果がなく、ぜん息治療と同じ吸入ステロイド薬と気管支拡張薬が有効です。
成人の場合、せきぜん息を放っておくと30~40%はぜん息に移行するといわれています。病院で検査を受け診断が出たら、医師の指示通りに症状がおさまってからも治療を続けることが大切です。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、主に長期間の喫煙が原因で肺に炎症が起こり、酸素と二酸化炭素を交換する役目をする肺胞が壊れ、息が吐き出しにくくなる病気です。初期には息切れやせき、たんなどのありふれた症状なので気づきにくい病気ですが、放置するとぜん息発作と同様の「おぼれるような」息苦しさに見舞われます。
厚生労働省の患者調査(平成26年調査)によると、COPDの総患者数(継続的な治療を受けていると推測される患者数)は26万1,000人にのぼります。治療を受けていない人も含めると、患者数は500万人以上と推計されており、日本人の死因の第10位注です。
COPDと診断された場合は、禁煙が大前提です。肺機能は加齢に伴い低下していきますが、喫煙者では肺機能の低下がより早く進行します。しかし、禁煙することで、その後の肺機能の低下具合は、たばこを吸わない人とほぼ同程度になります。
薬物療法としては、気管支を広げる長時間作用性抗コリン薬や長時間作用性β2刺激薬といった吸入薬が使われます。また、残っている肺の機能を保つための呼吸リハビリテーションも有効です。
壊れてしまった肺をもとに戻すことはできませんが、禁煙と適切な治療で、今残っている肺の機能を保つことは十分可能です。とくに40歳以上の喫煙者(過去に喫煙していた方も)は、COPDのおそれが高くなります。せきやたん、息切れなどの症状が見られる場合は、病院を受診し検査を受けましょう。
COPDとぜん息が合併していることもあります。とくに高齢者に多く、ぜん息とCOPDが合併していると、ぜん息が悪化する頻度が高く、QOL(生活の質)も低くなり、病気の経過(予後)も悪いことがわかっています。
COPDと診断されている患者さんで、動かなくても発作性の呼吸困難がある(とくに朝、晩)など、ぜん息の症状がみられる場合には、合併のおそれもありますので医師に相談しましょう。
COPDについて詳しくは、ぜん息などの情報館慢性閉塞性肺疾患(COPD)基礎知識をご覧ください。
心臓の病気(虚血性心疾患、心臓弁膜症、心筋症など)によって、発作性の呼吸困難が起こることがあり、「心臓ぜん息」とも呼ばれます。とくに60歳以上の患者さんに多いとされ、体を動かしすぎた日の夜に急に息苦しさが増したり、カゼなどの気道感染症、寒さなどで症状が出やすくなります。
以下のような症状がみられたら、心臓の状態が悪化していないかどうか、医師に相談してください。
まれですが、そのほかにもぜん息発作とよく似た「ゼーゼーヒューヒュー」という音が聞こえる疾患がいくつかあります。その中には、耳鼻咽喉科で診察される声帯や気管の病気があります。また、胸の痛みを伴うことが多いですが、肺の一部が破れてしぼんでしまう「気胸」、心臓から肺に行く血管がつまる「肺血栓塞栓症」などもあります。肺血栓塞栓症は、血たん、喀血、胸の痛みを伴います。
通常のぜん息治療でよくならない場合は、専門の施設で詳しく調べることも大切です。