
地球環境基金便り No.47 (2019年9月発行)
お話を伺った公益財団法人公害地域再生センター(あおぞら財団)研究員/公害資料館ネットワーク幹事の林 美帆さん
日本では1950~70年代の高度経済成長期に公害が深刻な社会問題になりました。「4大公害訴訟」とも言われる水俣病、新潟水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそくは一般によく知られていますが、その他にも、全国各地で公害による健康被害が生じ、訴訟が起きました。
公害資料館ネットワークの事務局がある大阪市西淀川区もまた、公害に苦しんだ地域です。阪神工業地帯の一地域として大きな工場が立ち並び、利益優先の操業をした結果、大気汚染・水質汚濁・土壌汚染・騒音など、さまざまな公害が発生し、「公害のデパート」とも言われました。「大阪西淀川大気汚染裁判」の和解金の一部で設立された公害地域再生センター(あおぞら財団)では、公害のないまちづくりに関する調査や研究事業に取り組むとともに、公害や裁判の資料を集めた「西淀川・公害と環境資料館」をつくり、公害の経験を保存・発信しています。
あおぞら財団のように公害を伝える活動をしている組織や団体、資料館は全国各地にありますが、これまで資料館同士の横のつながりはほとんどありませんでした。というのも、ひとくちに「公害」と言っても、有機水銀、カドミウム、ヒ素などその原因も違えば、ぜんそく、言語障害、がんなど症状も違います。また川の流域や海、鉱山、コンビナートなどその土地に起因する問題もあり、公害の経験を共有することが難しかったからです。それがなぜ「公害資料館ネットワーク」の設立につながったのでしょうか。事務局を務める公害地域再生センター研究員の林美帆さんは、「全国各地の資料館が公害教育に取り組んでいますが、公害の経験を次世代に伝えたいという目的は同じにもかかわらず、それぞれが理解し合っていない状況に危機感を覚えていました。また海外から資料館を訪れる人も増えるなか、日本の公害問題を整理し体系化する必要性も感じていました。そのためには各地の資料館が連携し、公害の特徴を理解し合い、共通点を見つけ、協働していく必要があると考えたのです」と語ります。
展示やフィールドワークの受け入れの詳しい情報は、公害資料館ネットワークのサイト (外部のサイトを新しいウィンドウで開きます)をご覧ください。