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地球環境基金便り No.48 (2020年3月発行)

助成活動レポート Field Voice
特定非営利活動法人 森からつづく道

オオキトンボをきっかけに
地域の活性化を目指す

写真1

オオキトンボの成虫

オオキトンボは体長5センチ程度、全身がオレンジ色のトンボです。以前は広い地域に分布していましたが、近年、その数が著しく減少。今や環境省のレッドリストの絶滅危惧IB類(近い将来における野生での絶滅の危険性が高い)に指定されています。
そんな希少なオオキトンボが今なお数多く生息している愛媛県松山市北条(ほうじょう)地域で、オオキトンボの保全活動に取り組んでいるのが「森からつづく道」。オオキトンボが生息できる環境の価値を地域住民に知らせ、保全活動を通じて地域を盛り上げようと邁進する同団体の活動に注目しました。

「森からつづく道」が活動する松山市北条地域は、瀬戸内海と高縄山(たかなわさん)に挟まれ、そこは干潟、河川、田んぼ、果樹園、人工林などのさまざまな環境が重なり、人と自然が共存する生物多様性豊かな里地が広がっています。

降水量が少ない瀬戸内海沿岸では、古くから農業用水を確保するために、ため池が多くあり、北条地域には300以上が存在します。そのため池に水を入れたり、抜いたりするため池管理のタイミングがオオキトンボの生活史(産卵、孵(ふ)化、羽化などの時期)と合致し、日本一といわれるオオキトンボの生息地となっています。しかし、近年、耐震性の強化や漏水防止、管理の負担軽減を図るため、ため池の法面をコンクリートの張ブロックにする改修工事が進んでいます。改修によって、水辺の環境やため池の管理方法が変わってしまい、オオキトンボの生息に必要な環境が減少することが懸念されています。同団体事務局長の黒河由佳さんは「オオキトンボが継続的に生息できる環境がため池の管理方法やサイクルに沿う形で保全されることが理想的で、そのためには地域の人たちの協力が必要不可欠です。ため池の環境が変わっていくなかで、まずはオオキトンボの希少性や生息する環境の価値を地域の人たちに知ってもらうことが保全の一歩だと感じました」と言います。

ため池に水を入れたり、抜いたりするため池管理のタイミングがオオキトンボの産卵、孵化、羽化などの時期に合致し、オオキトンボが生息しやすい環境が保たれています。オオキトンボはため池の水抜きが行われる秋ごろに、水量が減ったところにできる浅い水辺に産卵し、卵のまま越冬します。ため池に水が入る春に孵化し、満水になる夏ごろに羽化すると、ため池を離れていきます。そして、冬になるとまた産卵のためにため池に戻ってきます。

保全活動を進めるうえで鍵となるのが、ため池管理者たちとの連携、情報の共有です。ため池管理者たちには、高齢化や管理者数の減少などの切実な事情があり、オオキトンボの保全のためといっても、安易に協力を求められない状況でした。そこで、団体としてもため池の草刈りに積極的に参加するなど、ため池管理を理解することで、ため池管理者たちとの連携を深めていきました。さらに、生態調査に基づき検討したため池の管理方法や、オオキトンボが存在する自然豊かな環境の価値などをさまざまな機会で発信してきました。

写真2

子どもたちが自然に親しみをもってもらえるように、小学校の授業でオオキトンボの観察を行っています

また同団体が地域の子どもたちにオオキトンボが生息していることを知ってもらい、保全の機運を一緒に高めてもらおうと、小学校に相談したところ、学校も子どもたちが自然に親しみ、誇りをもつきっかけになると考え、授業としてオオキトンボの観察を行うようになりました。さらに、オオキトンボを広く知ってもらうために2017年と19年に「風早(かざはや)トンボサミット」を開催しました。サミットでは、トンボの生態を研究している方や他の地域でトンボの保全に取り組んでいる方などに講演をしてもらい、地域の人たちにオオキトンボが生息できる環境の価値を伝え、情報交換も行われました。

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