
地球環境基金便り No.48 (2020年3月発行)
計量器メーカーの枠を超え、近年では、健康意識の高い自社の社食レシピを活用し、食堂を展開している株式会社タニタ。
同社は2018年から、全国の郷土料理を健康的においしくアレンジするレシピを募集する「ご当地タニタごはんコンテスト」を開催しています。今回はコンテストの企画背景やSDGsとの関わり方などを伺いました。
カロリーや塩分量を抑えた健康的なメニューを提供する「タニタ食堂」。その知名度は高く、現在、全国で7店舗展開しており、将来的には全ての都道府県での出店も視野に入れています。
しかし、タニタ食堂を全国展開していくうえで、提供しているメニューにはまだ改善の余地があると、同社ブランディング推進部長の猪野正浩さんは話します。「日本は各地方で気候や風土が違えば、食文化も大きく違います。全国で共通のメニューを提供するのではなく、それぞれの地域になじみのあるメニューを提供するほうが、お客さまに喜ばれるのではないかと考えました。そこで着目したのが、地域ならではの特色が強く出ている郷土料理です」
日本には、各地にその地域の特色を生かした郷土料理があります。しかし郷土料理のなかには、今ほど輸送技術や保存技術が発達していない時代に考えられ、塩気を強くすることで腐敗を防いでいたものも多く、現在の健康基準に当てはめると、カロリーや塩分過多なレシピが少なくありません。そのレシピがそのまま現在まで受け継がれてきたため、今ではあまり若い世代に浸透していないという状況があります。「和食がユネスコ無形文化遺産に登録され注目を受けるなか、地域ならではの食材、味付けを取り入れた郷土料理がなくなってしまうのはあまりにもったいないですよね。そこで郷土料理に我々が得意とする『健康』という要素をプラスし、郷土料理をアップグレードできないかと考えました」と猪野さんは話します。
郷土料理を現代風に食べやすく、より身体にいいものに生まれ変わらせることで、次世代にも継承していきたい。そんな思いから、郷土料理のアレンジレシピを募集する「ご当地タニタごはんコンテスト」が生まれました。
全国の郷土料理を「タニタが考える健康的な食事の目安」に基づきアレンジし、食の伝統の継承とともに、新しい地域の特産品として広く認知、普及させ、地域の活性化に結びつけることが目的。
参加資格はプロ・アマチュア・企業など問わないが、チームの中に必ず栄養士もしくは管理栄養士を入れることを条件としている。全国5ブロックの予選会から選ばれたチームが全国大会へ進む。全国大会では15チームがプレゼンテーションを行い、グランプリ・準グランプリが選ばれる。
2020年の第3回大会では女優・のんさんがアンバサダーに就任することが発表されている。
さらに「ご当地タニタごはんコンテスト」には、もうひとつの目的があります。それは「地域の活性化」です。「以前はある地方でしか食べられていなかった料理が、今では全国区になっていたり、その料理を食べるために観光客がその土地を訪れたりなど、料理には人を動かす力があります。地域の特産品を使った料理や郷土料理を活用したイベントを開催することで、地域の住民自身が郷土料理を見直すきっかけとなり、地域活性化にもつながります。このコンテストもそのような効果を期待しています」と猪野さんは展望を語ります。
猪野さんは「事業にSDGsの要素が加わることで、自治体との連携が期待できる」と話す
また、コンテストを地域おこしにつなげるために、積極的に自治体と連携を図っています。「郷土料理をきっかけに、地域の活性化に結びつける」というコンテストの趣旨に賛同し、自治体から地域の住民に声をかけ、出場を呼びかけてくれた例もあります。地域おこしは自治体が携わることで、地域住民も参加しやすくなるものです。猪野さんは今後も自治体と連携し、食で地域を盛り上げる仕組みづくりに力を入れていくと言います。