
地球環境基金便り No.48 (2020年3月発行)
18年に始まり、これまでに2回開催されたコンテストでは、実は猪野さんの予想以上に学生など若い世代の参加者が多かったと言います。なかでも特に猪野さんの印象に残っているのが、第1回に参加した高校生のチームです。「その高校生チームのメニューは、地元でとれた鰹(かつお)を使ったものでした。鰹は一般的には背中の身しか食べないことが多いのですが、調べてみると、その地域では腹の身も食べる風習があったそうです。それを知った高校生たちが、今では捨てられることが多い鰹の腹を使ったアレンジレシピを考案し、コンテストに参加してくれたのです。若い人たちが自分が住む土地の食文化を調べ、その背景や現状を踏まえて新しい形の郷土料理を生み出し、それが地域おこしにつながっていく。これこそまさに理想の形ではないでしょうか」
レシピの基準には「一食あたり500~800kcal」「食塩相当量は3.5g未満」などがある
郷土料理に着目し、企画を練っていくうちに、このコンテストがSDGs(持続可能な開発目標)にもつながることに気づいたと猪野さんは言います。コンテストの一番の目的である食文化の継承はもちろん、健康、自治体との連携、まちづくり、地産地消など、このコンテストに含まれる要素の多くがSDGsの項目に当てはまります。
今後は郷土料理の継承を軸に、「タニタ食堂」の『食の健康』を加えたレシピを活用し、地域の活性化にもっと結びつけることを目標として、若い世代にアピールしていきたいと猪野さんは言います。「若い世代が食を通じて、自分の住む地域に関心をもってコンテストに参加してくれることで、食文化の継承や健康などのSDGsの目標を体感し、その価値を理解していく。このコンテストが日本の地方の魅力を再発見するとともに、次世代の明るい未来につながる機会となることを期待し、今後も継続していきたいです」
チームに入れることが必須条件である栄養士・管理栄養士の地位向上もこのコンテストの狙いのひとつ