本文へ

地球環境基金便り No.49 (2020年9月発行)

助成活動レポート Field Voice
認定特定非営利活動法人 ICA文化事業協会

生徒の植林活動をきっかけに、
地域の人々の意識が変わっていく

写真1

ケニアでの植林活動

ICA文化事業協会は1982年に設立され、「そこに住む住民が地域の専門家である」という信念の下、活力のある経済、生きがいのある生活、平和な地域を目指して、途上国を中心に貧困対策、環境保全、リーダーシップ育成等の活動に取り組んでいます。今回は、砂漠化が進むケニア南部において、学校での環境教育を兼ねた植林緑化活動と、地域住民の意識変革の取り組みについてお話を伺いました。

ケニア南部にあるカジアド郡イシンヤ地区は、首都ナイロビから約60キロメートル、タンザニアとの国境沿いに位置します。半砂漠地域にあるこの地区は気候変動の影響もあり、近年は雨がほとんど降らず、干ばつの被害を慢性的に受けています。ケニア全体でも森林率はわずか7%ですが、カジアド郡では0.8%にまで減少という深刻な状況です。

この地域の住民の大半はマサイ族です。彼らはもともと牛やヤギを放牧し餌の緑を求めて移動する遊牧民族で、「木は天が与える物」と考え、木々を伐採しても植樹する習慣はありませんでした。しかし長引く干ばつによる水不足で家畜の損失が続き、これまでの生活を維持することも困難になっています。今の環境下で人と家畜が生きていくためには、自然環境を回復させるという意識を持つ必要があります。

当団体では、この問題を解決するために、まず現地の子どもを対象に環境教育を兼ねた植林活動を行い、周りの大人へ緑化活動への理解が広まることを狙って活動をスタートさせました。

子どもから大人へ広がる環境保全意識

まず地域の学校で植林活動を実施しました。「一緑運動」と名付けたこの活動のポイントは、一人の生徒が一本の苗木を植樹し、「苗木の保護者」として世話を続けることです。こうすることで生徒に責任感が生まれ、競い合い、楽しむことができるので、モチベーションが高い状態で苗木を育て続けることができます。

写真2

一人の生徒が一本の苗木を植樹する「一緑運動」

また植樹の際には現地の林野庁から専門家を派遣してもらいます。生徒は専門家から植林の必要性や苗木の特徴、正しい植樹の仕方、植えた後の苗木の世話の仕方まで学び、そして植樹に臨むのです。

このように植林活動と環境教育を一緒に行うことで、多くの生徒に緑化に対する意識の向上が見られるようになりました。それが少しずつ保護者にそして地域住民にも波及し、今や学校周辺の村でも環境教育が行われるようになりました。

また学校では、木を植えながら農作物も育てるアグロフォレストリーにも取り組んでいます。慢性的な干ばつの影響で住民の食糧事情も悪化しており、特に生徒の栄養不足は深刻です。そこで校内に設置したデモファームでは、植林と合わせて野菜栽培にも取り組むこととし、現地の専門家の指導で生徒と教職員が野菜栽培の研修を受けています。前年に取り組んだ学校では、収穫した野菜や果物が学校給食に出され生徒の栄養改善につながるとともに、家庭や地域の食料自給にも良い影響を与えています。

No.49 トップページへ

  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • Lineでシェア

地球環境基金の公式SNS

  • 地球環境基金 インスタグラム(別ウィンドウ)
  • 地球環境基金 Twitter(別ウィンドウ)
アドビ公式サイト(新しいウィンドウで開きます) adobe readerダウンロード
PDF形式のファイルはadobe readerが必要です。

地球環境基金 Japan Fund for Global Environment

〒212-8554 神奈川県川崎市幸区大宮町1310番 ミューザ川崎セントラルタワー
独立行政法人環境再生保全機構 地球環境基金部
TEL:044-520-9505 FAX:044-520-2192

独立行政法人環境再生保全機構 ERCA

Copyright, Environmental Restoration and Conservation Agency. All rights Reserved.

ページトップ