本文へ

地球環境基金便り No.49 (2020年9月発行)

サポーターインタビュー HAND to HAND
奥野製薬工業株式会社
JNC株式会社

「食品保存料は、正しく知って使えば安全なもの」
まずは理解してもらうことが大切

工業製品から食品添加物まで多岐にわたる製品を製造販売する奥野製薬工業株式会社とJNC株式会社。その製品の一つである食品保存料製剤「エコセーブDLP」は、両社の食品ロスの削減に対する思いから共同開発され、その売り上げを通じて地球環境基金をご支援いただいています。この商品の特長と食品保存料の役割について伺いました。

身近な食品に使われている「食品添加物」

普段、私たちがスーパーやコンビニエンスストアで購入している食品の多くに、食品添加物が使用されていることはご存じの方も多いと思います。では、食品添加物とは一体どんなものでしょうか。食品衛生法では「食品の製造過程で、または加工や保存の目的で使用するもの」と定義されていて、目的によって保存料や着色料、調味料などの種類があります(表1)。例えば、豆腐づくりに使われる「にがり」は、豆腐を固める凝固剤として昔から使われてきた食品添加物です。今日では、安全性と有効性について認可を得た上で、ソーセージやチーズ、パン、あめ、ゼリー、アイスクリーム、ジュースなどさまざまな食品に食品添加物が使用されています。

表1【食品添加物の主な種類と用途例】
種類 目的と効果 食品添加物例
甘味料 食品に甘味を与える キシリトール、アスバルテーム
着色料 食品を着色し、色調を調節する クチナシ黄色素、食用黄色4号
保存料 カビや細菌などの発育を抑制し、食品の保存性をよくし、食中毒を予防する ソルビン酸、しらこたん白抽出物、ポリリジン
増粘剤、安定剤
ゲル化剤、糊剤
食品に滑らかな感じや、粘り気を与え、分離を防止し、安定性を向上させる ペクチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム
酸化防止剤 油脂などの酸化を防ぎ保存性をよくする エリソルビン酸ナトリウム、ミックスビタミンE
発色剤 ハム・ソーセージなどの色調・風味を改善する 亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム
漂白剤 食品を漂白し、白く、きれいにする 亜硝酸ナトリウム、次亜硝酸ナトリウム
苦味料 食品に苦味を付ける カフェイン(抽出物)、ナリンジン
香料 食品に香りをつけ、おいしさを増す オレンジ香料、バニリン
酸味料 食品に酸味を与える クエン酸、乳酸
調味料 食品にうま味などを与え、味をととのえる L-グルタミン酸ナトリウム、5'-イノシン酸ニナトリウム
乳化剤 水と油を均一に混ぜ合わせる グリセリン脂肪酸エステル、植物レシチン
膨張剤 ケーキなどをふっくらさせ、ソフトにする 炭酸水素ナトリウム、焼ミョウバン
栄養強化剤 栄養素を強化する ビタミンC、乳酸カルシウム

一般社団法人日本食品添加物協会「食品添加物の種類と用途例」より作成

安全、高性能な食品保存料で食品ロス削減に貢献したい

「エコセーブDLP」は、食品の日持ちを向上させる食品保存料製剤です。食品会社はこの製品を使うことで安全に食品の保存性を高めることができます。奥野製薬工業株式会社東京食品技術課長の市岡法隆さんは、その特長について次のように話します。「エコセーブDLPの主成分であるポリリジンは、微生物(放線菌)の発酵により生成される天然由来の食品保存料です。ポリリジンは名前のとおり、ポリ=たくさんの、リジン=アミノ酸の一種がつながった物質です。リジンは人間の生命維持に必要な必須アミノ酸です。ポリリジンは他の食品添加物同様に毒性試験などで安全性が確かめられており、一方で食中毒の原因菌などには少量で生育を抑制する働きがあります」

ポリリジンは1980年代にチッソ株式会社(現JNC株式会社)が世界ではじめて大量生産する技術を開発しました。最初はその用途がなかなか見つかりませんでしたが、そのときすでに多くの食品添加物の製造を手掛けていた奥野製薬工業から、「市場では天然由来で安全・高性能な食品保存料が求められている」というヒントをもらい、その使い方が決まりました。種々の安全性試験をクリアし、1989年に食品保存料として許認可されると、おにぎりやお弁当などを中心に使用され、コンビニ業界の拡大に大きな役割を果たします。しかし、2000年頃から食品添加物に対する世間の風当たりが強くなり、できるだけ排除しようという風潮が高まっていきました。ポリリジンもその例外ではありませんでした。

「当時は「食品ロス」という言葉はまだ一般的ではありませんでしたが、今後の大きなテーマになると思いました。食品保存料メーカーとしてどんな貢献ができるのか。安全で高性能な食品保存料を開発したいという思いが合致し、さらに風味やおいしさを損なわずに保存性を向上させる研究が続けられました」とJNC株式会社ライフケミカル部課長代理の伊藤敬史さんは話します。こうして奥野製薬工業とJNC両社の協力によって2009年「エコセーブDLP」は開発されました。

写真1

お話を伺った方(左から):奥野製薬工業株式会社 食品営業部東京食品技術課 課長 市岡法隆さん、同社東京食品営業部 部長 新田雅樹さん、JNC株式会社 化学品事業部ライフケミカル部 課長代理 伊藤敬史さん

No.49 トップページへ

  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • Lineでシェア

地球環境基金の公式SNS

  • 地球環境基金 インスタグラム(別ウィンドウで開く)
  • 地球環境基金 X(旧Twitter)(別ウィンドウで開く)
アドビ公式サイト(新しいウィンドウで開きます) adobe readerダウンロード
PDF形式のファイルはadobe readerが必要です。

地球環境基金 Japan Fund for Global Environment

〒212-8554 神奈川県川崎市幸区大宮町1310番 ミューザ川崎セントラルタワー
独立行政法人環境再生保全機構 地球環境基金部
TEL:044-520-9505 FAX:044-520-2192

独立行政法人環境再生保全機構 ERCA

Copyright, Environmental Restoration and Conservation Agency. All rights Reserved.

ページトップ