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地球環境基金便り No.51 (2021年9月発行)

助成活動レポート Field Voice
晴れの国野生生物研究会

オオサンショウウオの保護で、
地域の生態系全体を維持していく

写真1

岡山県北部に位置する真庭市は、自然が豊かに残る日本有数のオオサンショウウオの生息地。この地域では、半分に引き裂かれても生きているという言い伝えから、オオサンショウウオは「ハンザキ」と呼ばれ親しまれている

オオサンショウウオは「生きた化石」とも呼ばれ、国の特別天然記念物に指定されています。しかし生息地の環境変化によりその数を減らし、今や絶滅が危惧されています。
日本有数の生息地である岡山県北部で、オオサンショウウオをはじめとした地域全体の生態系の保全に取り組んでいる「晴れの国野生生物研究会」。同団体の環境保全活動と、人と川がふれあう自然体験のフィールドづくりに注目しました。

真庭市は岡山県の中部から北部にかけてある市で、北部は鳥取県の県境に面している。

晴れの国野生生物研究会は、中国地方における野生生物の調査研究を目的として発足し、現在はオオサンショウウオの生息状況や環境の調査・保護に取り組むとともに、生き物と人と自然が共生する魅力的な地域づくりを進めています。「オオサンショウウオの調査や保護は、団体発足当時から取り組んでいます。活動の中心となる岡山県真庭市北部地域は、特別天然記念物の生息地として指定されている日本有数の地域ですが、近年の度重なる豪雨被害で個体が下流に流され、元の生息地に戻れず繁殖ができないという問題が発生。また、河川改修によって繁殖地となる渓流も減少しています。このような個体の減少や生息域の縮小により絶滅が危惧されています」と副会長の谷口真一さんは現状を話します。「オオサンショウウオが暮らす川として蘇らせるには、調査観察の拠点となるフィールドの整備や、流された個体が遡上できるスロープ設置のための調査が必要です。これらの取り組みを進めていくには、住民や行政の理解と協力が欠かせないため、団体の活動を知ってもらえるように、清流の環境を活かした自然体験学習会や観察会も実施しています」

人と川がふれあう拠点を

写真2

調査で捕獲されたオオサンショウウオ。世界最大の両生類で、体長が1.5メートル以上になる個体もいる

この地域の河川は昔はオオサンショウウオの営巣地となる自然または石積みの護岸でしたが、生活の変化に伴う河川改修でコンクリートブロックの人工護岸に変わり、生息できる環境が減っています。「広大な地域のどこが繁殖域なのかを把握したうえで、そこに拠点となるフィールドを整備しています。河畔歩道の整備やゴミの撤去を実施し、また徒歩が困難な場所ではゴムボートで移動できるようにロープを設置するなど調査観察ポイントを増やしています。このように人が水辺に近づきやすくなる工夫をすることで、住民や子どもたちも活動に参加できるようになり、このフィールドで多くの人がオオサンショウウオを観察し、保護の必要性を感じてもらうことが理想です」と徳永巧さんは話します。

整備されたフィールドでは、主に子どもたちを対象とした自然体験学習会を開催しています。「学習会の目的は、里山の自然環境を体感して、清流を中心とした生態系の保全の必要性を理解してもらうことですが、まずは楽しく参加できることが大切です。そのため、専門家の調査のような難しいものではなく、川遊びや探検、生き物の観察など、子どもたちが川とふれあう機会になるような活動メニューを考えています。参加して興味を持った人の口コミにより、さらに多くの人が参加するようになっています」と話します。

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