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特別号 地球環境基金は30周年を迎えました No.56 2024年3月発行

地球環境基金便り No.56 (2024年3月発行)

助成先団体のご紹介

CASE.2 助成メニューを活用し、新たなモデル事業を創出!

事務局長上垣 喜寛さん
持続可能な環境共生林業を実現する
自伐型林業推進協会
活動分野森林保全・緑化
助成メニュー
  • 2015~2019年度
    フロントランナー助成

■助成によって実ったこと森林という資源を未来に残す「自伐型林業」を推進できた

 日本の林業は、山の所有者が林業者に木々の伐採や搬出を任せる「委託型林業」が一般的でしたが、大規模な重機を使って短期間で大量の木々を伐採するため、森林が持つ機能を失わせるリスクが高くなります。
 一方、「自伐型林業」は、山の所有者や地域住民が自ら小さな重機で作業道をつくり、伐採、搬出、販売をおこなう小規模な林業のため、木々を伐り尽くさず育てることができ、長期的に安定した収入を得られるのが特徴です。
 持続可能な環境共生林業を実現する自伐型林業推進協会(以下、自伐協)が進めるこの林業モデルは、当初、周囲の理解をなかなか得ることができませんでした。そのような状況で助成をしてくれたのが、地球環境基金です。まだ実績がない新しい事業モデルの創出に助成金を出すことは、なかなかすごいことだと思います。5年という長期間の活動が認められたおかげで活動領域を徐々に広げることができ、自伐型林業を導入する自治体を増加させ、地域住民の参画や企業との連携を進めることができました。
 5年間のはたらきかけで、市民フォーラムや森林管理の担い手研修が次々と開催され、現在は累計で68の自治体が自伐型林業を推進しています。また、自治体で自伐型林業への支援活動を予算する動きも増えてきています。この活動を支えるため、全国各地で地域組織が立ち上がり、自伐協と連携して研修運営や山の所有者の相談窓口を担うなど、地域に根付いた活動を推進しました。

これまでの一般的な林業は、ピラミッド頂点の限られた林業者に補助金を固めて、山林所有者は業者に管理を任せるという形でした。自伐型林業は、ボランティアから副業、兼業、専業と裾野を広げていく地域林業・家族林業の広がりを目指しています。

全国で広がる皆伐。岩手県岩泉町では土砂災害の発生源に皆伐と幅広の作業道が。

■現在の活動とこれからの展望自伐型林業の新たな制度を設計し次世代に健全な森林を残していく

 自伐型林業を制度として位置付けるための取り組みをおこなっていきたいと考えています。これまでは、生産性の拡大を第一に大企業が林業に携わる形になっていましたが、これからは良質な木を厳選して適正な価格で流通させ、次の世代に健全な森林を残していく必要があります。その支援策を制度化するには、現行の「森林・林業基本法」の改正、もしくは新しい法律を制定する必要があると考えています。自伐協はこの課題を解決するため、今以上に自治体との連携を深め、しっかりとノウハウを蓄積しながら自伐型林業による受益者を拡大していきます。
 また、そもそも山がないと林業をおこなえないため、山の確保も重要です。山主と地域住民の橋渡し役を自伐協が担い、地域が一体となって山を管理していける体制を構築していきたいです。
 もう一つの視点として、経済的な持続可能性という物差しだけでなく、環境・生態系の持続性という観点も大事にしていきたいと思っています。自伐協では環境共生型林業を守り育てる取り組みとして、徳島県の橋本山林を生物多様性の保全が図られていることを国が認定する「自然共生サイト」に推薦し、登録されるに至りました。現時点で小規模・家族経営の人工林として登録されているのはこの一か所のみです。人の手が入ることで適正に管理され、経済的にも成り立っている森林をどんどん自然共生サイトに登録していくことで、環境面の持続性を担保できる自伐型林業の実績を積み上げていきたいです。
 生業を立てることと良好な森づくりを両立させる、地域に根ざした持続可能な環境保全林業を全国に広げていくために、自伐協は活動を続けていきます。

■今後、地球環境基金に期待することはこれまでにない新しい価値を創造する活動を応援してほしい

今までにないもの、新しいものを創っていこうとする活動を支援してくれる地球環境基金はとてもユニークだと思います。これからも団体がどんどん新しい企画を打ち出し、チャレンジできるような仕組みを期待しています。それによって、団体も変化し成長することができます。
 自伐協は森林の資源を確保しつつ、地域住民と山を結びつける新たな地域循環型産業の創出にこれからも取り組んでいきます。

社会に新たなモデル事業を提供し、自伐型林業による受益者を拡大していっている活動はまさに「フロントランナー」であり、頼もしさを感じています。2023年時点で家族経営の人工林地としては自然共生サイトに唯一登録されるなど、新たな挑戦を続けられています。今後も、国や自治体の政策などと連動した、さらなる活動を期待しております。

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