
地球環境基金便り No.57(2024年12月発行)
化学肥料や農薬の使用を減らし、環境負荷の少ない持続可能な農業を進める活動を、世界へ広げているのが「日本自然農業協会」です。
ベトナムは、コーヒー、こしょう、カシューナッツなども世界第2位の生産量を誇る農業国。お米の輸出国でもあります。ソンラー省バンホー県は、ラオス国境沿いにある少数民族が多く暮らす地域で、山岳部のため平地の耕作面積が小さく、多くが家族単位で営農する小規模農家です。同様の地理条件にある隣県では、キャッシュクロップ(商品作物)として飼料用とうもろこしを生産するようになり、除草剤・化学肥料・農薬散布をする、生態系を無視した画一的農業への依存が進んでいます。
これに危機感を抱いた現地の有機農業団体から要請を受け、私たちの活動が始まりました。
モデル農場では、収穫と収入が安定。人件費を賄えるまでになり、活動を継続する基盤が整ってきました。
大切にしているのは、それぞれの土地の土着微生物や植物発酵液肥料で行う自然農業です。前回の地球環境基金の助成期間(2021-23)を通じて、有効な微生物や肥料の検証とモデル農場を立ち上げ、ワークショップを開催。普及のための現地組織の土台づくりを行ったことで、自然農業の認知は増えています。
それに続く現在は、現地の大学との協力体制ができ、農家と学生を対象とした研修プログラムが始まっています。実践的な議論が深まるとともに、20~30代の若い世代における環境意識も高まってきました。また、農業を経験したことがない子どもが増えていることから、幼稚園での「親子農業体験ワークショップ」も新たにスタートしています。
心強いのは、熱意のあるベトナム人メンバーがいること。彼らが中心となり事務局の組織化が進行中です。自律的な活動が軌道に乗る道筋が見えてきています。
5日間の「研修プログラム」では大学生と農家がともに学びます。