令和7年12月10日に、令和7年度地球環境基金活動共有会にて「成果の見える化と発信」をテーマとしたオンライン研修を実施いたしました。
協働の構築(ネットワーク形成)や資金調達は、多くの団体が抱える課題の一つですが、活動の成果を知っていただかないとこれらの課題解決は困難です。
成果の可視化と発信をどのように協働構築や資金調達につなげていくか、講義とともに実際の活動団体からのグッドプラクティスの事例紹介、パネルディスカッションといった、実践的な知見やノウハウの獲得につながる内容となっております。
研修当日の概要や研修資料、様子を公開いたしますので、今後の環境団体の持続的な活動発展の参考にしていただければ幸いです。(当日プログラム概要はこちら)
本講義では、NPOにおける「成果」と「見える化」の基本的な考え方が整理されました。「成果」とは、事業の実施によって生まれる直接的・短期的な結果にとどまらず、中長期の行動変容や意識の変化など、受益者や関係者に現れる変化とともに、その周りの地域社会の変化や影響など、社会に現れる変化を含むものであると説明されました。
また「見える化」とは、目に見えにくいプロセスや「価値」を可視化し、誰に・何を・どのように伝えるのかを明確にすることで、協働関係の構築や各種資源の循環につなげる取り組みであると紹介されました。
さらに、NPOが自らの使命や価値観・哲学を軸に自団体に合った評価指標を設定・評価を行い、成果を共有・発信することが、組織運営/事業運営の改善や支援者・ステークホルダー等との関係構築に不可欠であると示されました。
NPO法人ezorockが、音楽フェスでの環境対策を端緒に、多様な主体と協働しながら、若者が地域づくりや自然保全、災害支援、過疎地支援などへ参画する取り組み、仕組みづくりを実施していることが紹介されました。
また、活動記事を若者自身が記録・公開する発信の仕組みや、活動自体を通じて若者が社会課題を自分ごととして捉え成長していく意義、成果を行動変容や気づきなどの質的変化として捉える重要性も示されました。加えて、事業設計そのものが多主体との関係構築やコミュニケーション促進につながり、活動の継続を通じて人・モノ・カネも集まり、協働の拡大や相互理解が深まる循環を生み出している点も共有されました。
ふくおかFUNは、海や河川をはじめとする水中世界の魅力や知見を「価値」として発信し、メディア取材や企業講演、保全活動を専門的なスキルや知識の提供として事業展開し、信頼に基づく協働の輪を広げてきました。成果発信をきっかけに、企業との実働型の連携やCSR参画が進み、継続的なパートナーシップへと発展しています。
また、団体内部では心理的安全性を重視し、独自の42指標による毎月の振り返りを行うことで、発信内容の質と専門性を高めてきました。こうした積み重ねが共感を生み、寄付に依存せず、活動の本質を理解し共に取り組む企業や地域の仲間が増えるという好循環が生まれています。
草野氏と大神氏は、ともに「信頼」「価値観」「対話」を基盤に活動を進めており、まず大切にするのは“お金ではなく理念”である点が共通して語られました。
草野氏は、寄付を断ることもあるなど譲れない姿勢を強調し、地域に根ざした小規模・分散型のNPO運営が今後、重要になると指摘しました。また、会議や現場を通じて若者が意見を持ち表現できる環境を整えることを重視しています。
大神氏は、規模拡大よりプロジェクトの価値向上を優先し、対話を“意見を持ち表現すること”と再定義。金銭的理由で優秀な人材が離れないよう有償ボランティアにこだわる姿勢を紹介しました。
議論を通じ、両団体に共通する“譲れない価値を軸にした信頼づくり”が、持続的な協働と社会への広がりを生むことが確認されました。
3者のパネルディスカッションの様子
アンケートでは、回答者の9割以上から「有意義だった」と評価いただきました。
自由記述の内容からも、紹介事例と同様の取組を自団体でも実践したいという意識喚起や、NPO視点での成果の発信のあり方について学びが深まった様子が窺えました。
今回の活動共有会研修プログラムでは、河合氏よりNPOにおける成果発信の重要性について、理論的な背景や検討のポイント等について、分かりやすく解説いただきました。ezorockの草野氏、ふくおかFUNの大神氏からは、成果の見える化と発信が、実際の活動の資金調達や協働へとつながった事例と、そのプロセスや仕組みなどについても紹介いただきました。
3者パネルディスカッションでは、事例紹介の掘り下げ、非営利団体として活動を推進していくことの意義、協働や参画を促進していたくための仕組みづくりなどについて、参加者からの質疑も交えた活発な対話が行われていました。
登壇者、参加者の皆さまには、当日の研修プログラムにて様々な気づき・学びを喚起していただき、誠にありがとうございました。
地球環境基金は、今後も環境団体等の事業の振興・発展を支援し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 10:00-10:10 | 開会 活動共有会全体の趣旨説明、主催者挨拶 |
| 10:10-10:15 | 導入 研修の趣旨説明、講師紹介 |
| 10:15-10:40 | 講義「成果の見える化と発信」 講師:office musubime 河合将生氏 |
| 10:40-11:05 | 事例紹介1「参加型の組織づくりと協働事例」 講師:NPO法人ezorock 草野竹史氏 |
| 11:05-11:10 | 質疑応答 |
| 11:10-11:35 | 事例紹介2「~ふくおかFUNが大切にしてきた現場づくり~」 講師:一般社団法人ふくおかFUN 大神弘太朗氏 |
| 11:35-11:40 | 質疑応答 |
| 11:40-11:55 | 三者ダイアログ 講師3名による対話 |
| 11:55-12:00 | まとめ |
2011年7月、office musubime (オフィス ムスビメ)を設立。伴走支援を専門としながらNPOの基盤強化、組織診断、評価、ファンドレイジング支援、コンサルティング・ファシリテーション等に取り組む。複数のNPOに役員やアドバイザーとして関わるほか、大学の非常勤講師や研修講師、チャリティや寄付に関する相談・助言等の活動も行っている。
在学中に国際青年環境NGO「A SEED JAPAN」の環境対策イベントに参加したことをきっかけに2001年に仲間とともに環境団体「ezorock」を設立。北海道最大級の音楽フェスティバルにおける環境対策活動を中心に展開。大学卒業後、建設コンサルティング会社に就職し、まちづくりや環境、観光などの調査に携わる。2005年に退社し、半年間組織経営の勉強をした後、06年4月に環境NGO ezorock代表理事に就任。13年にNPO法人取得。若者の社会参加を促進し、次世代の声を社会に届ける仕組みづくりを目指しながら地域づくりや環境活動を実施している。
大学在学中に訪れた西表島で、人々が自然を守るため懸命に努力する姿に感銘を受け「自然伝承」を人生のテーマに掲げる。その後、ダイビングインストラクターの資格を取得し、ダイバーができる社会課題解決に取り組むため、活動の中心を福岡・博多湾に置いた当団体を設立。「自然と人のつなぎ役」をミッションに活動を行っている。
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