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地球環境基金便り No.47 (2019年9月発行)

特集森林(もり)をつくる、
人をつくる

NGO・NPOの活動事例から
特定非営利活動法人
持続可能な環境共生林業を実現する自伐型林業推進協議会

収益性・持続性・防災力のある
自伐型林業で日本の林業を大きく変える

土砂災害防止のためにも自伐型林業の普及が急務

今、特に注目しているのが「災害防止」の視点で見た自伐型林業の効果です。近年、毎年のように大雨による大規模な土砂災害が発生していますが、大規模林業がその原因の一つとなっている恐れがあります。大規模林業では大型機械を山林に入れるために幅広の作業道を敷きますが、数か月使用するだけの粗いつくりなうえに作業後は放置するため、山腹崩壊を引き起こしかねません。また幅広の作業道により林内に強風が入り、倒木が増加。皆伐で露出した地面も表土流出や土砂崩壊を誘引するリスクをはらんでいます。

写真1

自伐林家が敷いた作業道(高知県)

一方で自伐型林業の場合、まず作業道が小幅であり、子や孫の世代まで使うことを考え丁寧に敷設することはもちろん、豪雨時に災害を引き起こさないよう水を逃がすルートまで考えながら道を敷いていきます。もちろん継続的に山林に入り、手入れをするため、大雨でも簡単には崩れません。実際に2016年の台風10号の豪雨で被災した岩手県岩泉地区や、17年の九州北部豪雨で被災した福岡県朝倉地区を調べると、皆伐地で大規模な土砂災害が発生しているのに対し、自伐型林業の山林では発生していません。災害防止の視点で考えても、自伐型林業の普及は急務と言えます。

自伐林家は1500人に さらなる普及で日本の主流に

団体を設立した14年当時、国内の自伐林家は古くから代々続く何軒かを除けばほぼゼロでした。そこから普及のために最も力を入れたのが、自治体との連携です。なぜなら収益性の高い自伐型林業であっても、最初の数年はどうしても経営が厳しいからです。自伐林家が最初にやることは作業道を敷くことですが、これには手間も時間もかかります。しかもその間は木材を売る収入は見込めないため、新規就労から最初の数年のサポートを自治体にお願いしています。新たに自伐林家になる人には、最初は自治体のサポートや補助金に頼り、3年目までに収入を安定させ、5年目から完全に自立することが目標だと伝えています。

全国で自伐型林業の研修会等を開催しながら、興味を示した自治体に協力を要請。昨年度までに全国43の自治体が自伐型林業の推進を予算化するに至りました。自治体が研修会を開催する際には、当団体から講師を派遣。自伐林家誕生後も技術習得会を開催したり、経営相談にのったりもします。こうした活動を経て、ゼロだった自伐林家が1500人にまで増加しました。

写真2

自伐型林家によって手入れされた森林を眺める中嶋さん

また現在、新しい取組としてスポーツ選手との連携を企画中です。スキーやスノーボードの選手は競技だけでは生活が厳しく、引退後のセカンドキャリアに苦しむ人も多くいます。そこで自伐型林業に関心が集まり、スノーシーズンは競技、グリーンシーズンは林業に取り組み、引退後は林業に集中するモデルを構築できないか考えています。また山林を所有する企業と連携する計画も動き始めています。

地球環境基金のフロントランナー助成を受けて今年で5年目。連携する自治体は目標以上に増え、自伐林家も順調に育ちつつあり、手ごたえを感じています。しかし自伐型林業の普及は、中山間地域の存続にも災害防止にも待ったなしの状況であり、まだまだ増やしていかなければなりません。より多くの山林所有者や林業に興味を持つ人々に自伐型林業の情報を届けて全国に普及させ、いずれ自伐型林業を日本の主流にしていきたいです。それが日本の森林保全と林業の再生、そして中山間地域の存続につながっていくと確信しています。

未経験から自伐型林業へ 滝川 景伍さん

写真3

高知県佐川町で若手自伐林家としてがんばる滝川さん(左)と中嶋さん。滝川さんは全くの異業種から林業の世界へ飛び込んだ

「地域おこし協力隊」として高知県佐川町に来て、2年前に自伐林家として独立。今は子育てに比重を置きつつ林業に取り組んでいます。一番難しいのは作業道づくりですが、講師の指導を受けて2、3年で覚えられましたし、自分が敷いた道が延びていくというのは楽しく、達成感があります。

佐川町は自伐林家へのサポートが充実しており助けられていますが、いずれは木材だけで利益を出せるようにしたいです。今、管理している山も、自分の代で終わりではなく、次の世代に引き継いでいきたいと考えながら作業しているので、その思いを山主さんにも理解してもらえるようにがんばっていきます。

特定非営利活動法人
持続可能な環境共生林業を実現する自伐型林業推進協会

活動名
新たな持続可能な環境保全型「自伐型林業」の推進基盤づくりと全国普及
団体所在
東京都渋谷区
URL
https://zibatsu.jp/
SDGsの目標
  • 06 安全な水とトイレを世界中に
  • 07 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
  • 08 働きがいも経済成長も
  • 09 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 11 住み続けられるまちづくりを
  • 13 つくる責任つかう責任
  • 15 気候変動に具体的な対策を

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