地球環境基金便り No.47 (2019年9月発行)
特集森林(もり)をつくる、
人をつくる
森林を健全な状態に保つには、森林に携わる人が必要ですが、現在、林業従事者は全国で5万人以下にまで減少しています。林業に興味をもつ人がいても指導者不足で育成できないため、林野庁が林業未経験者の技術習得等を支援する「緑の雇用」という制度を設け、年間約1300人が林業に従事するようになっています。
森林ボランティアもまた重要な存在です。森林ボランティアは80年代に地球温暖化など環境問題解決策の一環として活発に進められてきましたが、最近は「山をきれいに」よりも、例えば「野鳥の生息地を守ろう」といった具体的な取組のほうが人気です。もちろんきっかけが何であっても、できるだけ多くの人が山に入り、森林に親しみを感じてもらえれば、それがいずれ森林保全につながっていくでしょう。
「森づくりは百年の計」と言うように、長い時間をかけてつくられます。盛んにスギやヒノキが植林されてから約50年。私たちは、あと50年後にどんな森林にしたいかを考えて、森林保全に取り組む必要があります。荒廃した森林を健全な状態に戻すには時間がかかります。今なら間に合いますが、あと10年放ってしまえば手遅れです。今こそ、林業に携わる人、NPO・NGO、森林ボランティアはもちろん、一般市民や多様な企業をも巻き込んで、森林保全のムーブメントを起こしていかなければなりません。
1953年長野県生まれ。専門は森林政策学、山村経済学、森林レクリエーション学、村おこし論。日本森林学会会員、美しい森林づくり全国推進会議事務局長などを務めるほか、林野庁、環境省、国土交通省等の各種委員会の座長など産学官民の多様なセクターに関わり、実践的に全国の森づくりや地域づくりの活性化を手掛ける。