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地球環境基金便り No.49 (2020年9月発行)

特集食と環境

NGO・NPOの活動事例から
特定非営利活動法人 循環生活研究所

地域で食べ物の栄養を循環させる
「ローカルフードサイクリング」

写真1

生ごみからつくった堆肥を使い、年間30~40種類くらいの野菜をつくって地域で販売している

安全な野菜を当たり前のように手に入れられる社会にしたい。そんな思いから、当団体は家庭に「コンポスト」を普及させる活動をしています。コンポストとは、身の回りにある生ごみや落ち葉などの有機物を微生物の働きで発酵・分解させて堆肥にする方法、またはその道具のことです。

写真3

循環生活研究所が家庭用に開発したダンボールコンポスト。基材が入っており、生ごみを入れて混ぜるだけで、約3か月で栄養たっぷりの堆肥が出来上がる

家庭用コンポストに入れるのは、私たちが毎日の食事で出す生ごみです。生ごみは栄養たっぷりでバランスが良く、いい堆肥のもとになります。生ごみからできた堆肥を土にまぜて育てた野菜は、安全であることはもちろん、甘みが強くて香り高いと評判です。家庭用コンポストは、ごみが減り、ごみの焼却で出るCO2も減り、しかも安全でおいしい野菜を食べられる、まさにいいことずくめなのです。

当団体ではこれまで約20年にわたり、地元福岡市だけでなく全国に家庭用コンポストを広める活動をしてきました。ところが数年前、生ごみの堆肥化の取り組みについて調べたところ、人口のわずか1%の人しかやっていないことが判明。普及活動に力を入れて取り組んできて、少しずつ定着しつつあると手ごたえを感じていたのですが、実際にはまだまだ活動を広げていく必要があることを痛感しました。

写真2

お話を伺ったディレクターの木村 真知子さん

もっと多くの人にコンポストを使ってもらいたい。そしてコンポストを使ったことで、自分たちの暮らしがもっと豊かに、もっと楽しくなることを実感してほしい。そう考えて生まれたのが「ローカルフードサイクリング(LFC)」です。

住民が生活圏内で栄養の循環を体感できる仕組み

LFCをひとことで言えば、地域で食べ物の栄養が循環する仕組みです(図)。家庭にコンポストを置き、家庭から出た生ごみを入れてかき混ぜます。コンポストは定期的にコンポストクルーと呼ばれるスタッフが手入れ・回収。当団体が堆肥に仕上げ、その堆肥を使ってコミュニティーガーデンなどで野菜を育てます。できた野菜は地域のマーケットなどで販売し、家庭の食卓へと循環します。

図ローカルフードサイクリング(LFC)の仕組みローカルフードサイクリングは、家庭から排出された生ごみがコンポストで堆肥となり、それを回収して菜園で肥料として使い、菜園で野菜が育って地元のマーケットで販売して再び家庭の食卓にあがるという、地域で食べ物の栄養が循環する仕組みです。

私たちは、このLFCを、一般的に人が自分の生活圏だと感じられる範囲である「半径2キロメートル」という小さなコミュニティー内で循環させることにこだわっています。それだけ身近なところで自分の家庭から出た生ごみが堆肥になり、その堆肥を使って育てた野菜が再度食卓に上がるという栄養の循環を「自分ゴト」として体感できることが大切だと考えているからです。

またLFCには、コンポストを継続しやすいという利点もあります。実はこれまでは、コンポストを設置したものの「虫が発生した」「においが強くなった」「プランターだけでは堆肥を使いきれない」などの理由でやめてしまう家庭が少なくありませんでした。コンポスト設置後のフォローアップ講座なども実施していましたが、基本的には個人任せだったため、利用者とのその後のつながりがあまりなかったことも問題でした。その点、LFCではコンポストを当団体で手入れ・回収するため、虫やにおいの発生といったトラブルにも対応でき、しかも堆肥はコミュニティーガーデンで使用するので用途にも困りません。なにより定期的な回収や地域の畑で野菜をつくることで、コンポスト利用者と身近に接することができます。LFCを導入したおかげで、コンポストを途中でやめてしまう人が少なくなりました。

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