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地球環境基金便り No.49 (2020年9月発行)

特集食と環境

NGO・NPOの活動事例から
特定非営利活動法人 循環生活研究所

地域で食べ物の栄養を循環させる
「ローカルフードサイクリング」

地域の特性に合わせて導入スタイルを柔軟に変えていく

LFCを初めて取り入れたのが、福岡市のアイランドシティにある照葉(てりは)地域です(2017~19年度地球環境基金助成活動)。10年ほど前に開発された新しい街で、30~40代くらいの夫婦と小学生以下の子どもという家族構成が非常に多い地域です。若い世代は生ごみや堆肥に対して「汚い」「くさい」などマイナスイメージを持っている人が多いため、LFCをおしゃれに見せることを意識し、SNSも利用して広報活動を実施しました。もともと環境意識が高い住民や、子どもの教育のために参加したいという家庭も多く、3年間で約300世帯が活動に参加。地域の生ごみ52.5トンを資源化し、34種類275.5キログラムの野菜を地域へ提供することができました。

これに対して今年度から新たに助成を受けて活動している美和台地域は、福岡市内で最も高齢化が進んでいる地域の一つであるため、この地域では高齢者福祉を兼ねたLFCの導入に取り組んでいます。高齢者宅にコンポストを設置し、見守りを兼ねてコンポストの手入れのための訪問をするほか、公民館や福祉カフェなど高齢者が集まる既存の場所をコンポストの回収・堆肥化の拠点にする、使っていない庭や畑を菜園化し、農作業のサポートをすることにも取り組んでいます。

写真1

コンポスト回収時の様子

また美和台地域の活動では、LFCの健康維持効果にも注目しています。当団体スタッフと一緒に農作業をすることで、高齢者は日常的に土を触り、体を動かすようになります。さらに自分たちでつくった無農薬でおいしい野菜を食べられるこの活動は、地域の高齢者の予防医療や健康維持にも寄与するはずです。なかなか数値に表しにくいものですが、LFCに参加したことで、身体的にも精神的にも健康になったと感じてくれる人が増えることを期待しています。

このほかにも、福岡市の繁華街・天神でもコンポストを導入し、ビルの屋上でプランター菜園をつくる試みを始めています。住人が少なく飲食店が多い繁華街ではどんな方法があるのか、手探りの取り組みです。LFCのやり方は一つではありません。地域によってどんな仕組みが適しているかを、その地域にかかわる人たちと一緒に考えていくことがとても大切です。

生ごみを焼却しないことが当たり前の世の中にしたい

野菜を育てるには栄養分が必要です。特に窒素、リン、カリウムの3つは欠かせませんが、近年、リンの値段が高騰しています。原料となるリン鉱石は中国やアメリカなど限られた国にしか存在しないうえに、数十年後に枯渇するという予測もあり、原産国が輸出を制限し始めているからです。

野菜くずを含む生ごみには、当然リンが含まれています。私たちはリンが枯渇しかけているにもかかわらず、貴重なリンを含む生ごみを焼却しているのです。持続的に安全な野菜を生産していくためには、これまで以上に生ごみに含まれている栄養を循環させることが大切になっていきます。コンポストだけで全ての生ごみの堆肥化を担うことは難しいので、行政による資源回収等の循環の仕組みをつくることも大切ですし、それ以外にも方法があると思います。どんな仕組みであれ「生ごみを焼却しない」ことが当たり前の社会になることを目標に、今後もLFCの普及に取り組んでいきます。

特定非営利活動法人 循環生活研究所

活動名
「ローカルフードサイクリング美和台」で目指す持続可能な共助社会
団体所在
福岡県福岡市
URL
https://www.jun-namaken.com/
SDGsの目標
  • 01 貧困をなくそう
  • 02 飢餓をゼロに
  • 03 すべての人に健康と福祉を
  • 04 質の高い教育をみんなに
  • 05 ジェンダー平等を実現しよう
  • 06 安全な水とトイレを世界中に
  • 07 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
  • 08 働きがいも 経済成長も
  • 09 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 10 人や国の不平等をなくそう
  • 11 住み続けられる まちづくりを
  • 12 つくる責任 つかう責任
  • 13 気候変動に具体的な対策を
  • 14 海の豊かさを守ろう
  • 15 陸の豊かさも守ろう
  • 16 平和と公正をすべての人に
  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう

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