
地球環境基金便り No.52 (2022年3月発行)
2020年度からは、鹿と人との多様な関わり方について考えてもらうため、クリエイターと協働での広報ツールの制作や、鹿や捕獲に関心がある人が集まれる施設の開設、利用しづらい部位を活用した鹿肉レシピの開発など、多様な関わりしろのデザインを試みています。「鹿への新たな見方を得るきっかけとして、実際に被害に遭っている農園で収穫した野菜と捕獲した鹿肉を使い、親子で料理をしながら人や鹿の暮らしについて考えるイベントも予定しています。人の都合で鹿の生態を翻弄してきた歴史を繰り返さないためにも、一つの答えに導くのではなく、それぞれが鹿への理解を深め共生のあり方を考え続けるしかありません」と大島さんは話します。
お話を伺った代表理事亀山貴一さん(左)大島公司さん(右)
「震災から10年以上活動を続け、次に進む段階だと思います。鹿の問題は、自然に囲まれた地域で私たちが『この地でこれからどう生きるべきか』を問うもので、それを考え続けることこそが重要です。足元の暮らしを見直しながら活動していくことで、変化する地域課題への柔軟な対応力を育み、地域の持続性を高められる。それが地球規模での環境保全にもつながっていくのではないかと考えます」とこれからについて亀山さんは話されました。
啓発の取り組み その1: ランチョンマット型の広報ツール
Cafeはまぐり堂やイベントで使われたランチョンマット。表面は目を引く写真とコピー。裏面は鹿の現状や捕獲・解体の問題、肉食文化についてなど、鹿について多面的に考えるきっかけとなる文が掲載されている。
啓発の取り組み その2: 流通しにくい肉の部位を活かす工夫
流通しにくい肉の部位を活かす工夫
ジビエとして流通しやすい部位は限られるため、利用が限られている部位を美味しく食べるためのレシピを開発している(左)。長い目で、フランスの食肉加工(右)のような文化をつくることが目標。
啓発の取り組み その3: フォローアップ拠点の整備
多様な人の関心を掘り起こすことと並行して、鹿にまつわる活動を始める人をフォローアップするための活動拠点を整備している。鹿肉の消費拡大を目指す若者が現れるなど、少しずつ成果の芽が出始めている。